5月の短距離弾道ミサイル発射に対する日米首脳の認識と北朝鮮の反応

5月の短距離弾道ミサイル発射に対する日米首脳の認識と北朝鮮の反応

出典 Dan Scavino Jr. [Public domain], via Wikimedia Commons

5月の短距離弾道ミサイル発射に対する日米首脳の認識と北朝鮮の反応

トランプ大統領が訪日 北朝鮮はどのように報じているか?の続き。

 安倍首相は共同記者会見において、「5月9日の北朝鮮による短距離弾道ミサイルの発射は国連安保理決議に違反するものであり極めて遺憾である」と述べたのに対し、トランプ大統領は「(安保理決議)違反の可能性があるとの見方があるが、私の見解は違う」としたのだ。

 これをもって日米首脳が対北政策で一致していないと断じることはできないが、すでに金正恩委員長との会談を果たして対話を進めようとするトランプ大統領なりの考えがあるのだろう。

 もっとも、トランプ大統領の見解が米国政府内で中心的な認識かと言うと少々異なり、ボルトン米大統領補佐官やシャナハン米国防長官代行などは、安倍首相と同様に「短距離弾道ミサイル発射は安保理決議違反である」として厳しい見解を示している。

 この点、北朝鮮外務省報道官は5月27日、ミサイル発射は軍事訓練の一環だとした上で、「誰かを狙った行動ではなく、周辺国家に危険を与えたものでもない」と強調した。さらに、安保理決議違反だとするボルトン補佐官に対して、彼が1994年の米朝枠組み合意を壊したと主張し、「平和と安全を破壊する安保破壊補佐官と呼ぶにふさわしい」と強く非難している。

トランプ大統領への非難は避ける北朝鮮。今後の米朝交渉の行方は?

 このように北朝鮮は、拉致問題を取り上げる日本や、北朝鮮を糾弾する米国に対して名指しで厳しい非難を展開している一方で、トランプ大統領に対しては一切の非難を避けている。

 もちろんトランプ大統領を非難してしまえば米朝交渉が完全に終わってしまうかもしれないという計算もあるだろうが、トランプ大統領への言及を注意深く避けているところを見る限り、少なくともトランプ大統領に対する悪意は感じない。

 北朝鮮は今回の日米首脳会談の行方にも注目していたと思われるが、トランプ大統領が拉致問題解決を強調しながらも、安倍首相や米政府高官と一線を画してミサイル発射を「気にしない」と発言したことなどで、トランプ大統領に対する信頼感を増したかもしれない。

 だが、同時に、北朝鮮はトランプ大統領が手放しで歩み寄っているわけではないことも認識しているだろう。トランプ大統領は共同記者会見において、「北朝鮮は核実験や長距離ミサイル発射を行っていない」として、今回の短距離弾道ミサイル発射を問題視しない考えを示した。これは、裏を返せば核実験や長距離ミサイルを発射すれば話は別であるということだ。

 トランプ大統領はミサイル発射を「(北朝鮮は)気を引きたかったのかもしれない」と表現しているが、北朝鮮がこれ以上の強硬手段を取ることは善策でないように見える。

 現在、米朝交渉が停滞している中、トランプ大統領にどのようなプランがあるのかは分からないが、少なくとも金正恩委員長との対話を続けようとしている間は米朝交渉に見込みがあるだろう。

 第1回米朝会談から6月12日で1年が経つ。今後の米朝の動向に注目していきたい。
 

八島 有佑

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