日本人配偶者が本国から正式に朝鮮民主主義人民共和国の国籍変更を許可されたとしよう。だが、日本政府は朝鮮籍もしくは朝鮮民主主義人民共和国籍の取得を認めない上に、国内において無国籍状態になることを防ぐため日本国籍の離脱も許可していない。そのため、この配偶者は実質的に朝鮮民主主義人民共和国籍とともに日本国籍も併せて保持するという不自然な状況に置かれるのだ。

 本来の国籍原則によれば本国(北朝鮮)が認めた国籍を他国が否定することはできないはずが、日本ではこのような扱いがなされている。
 

朝鮮籍保有者は海外渡航のハードルが高い

 朝鮮籍の場合は海外渡航でも韓国籍と異なる扱いを受ける。

 朝鮮籍保有者が海外に渡航する場合は、前述の朝鮮総連発行の朝鮮民主主義人民共和国旅券か、法務省が発行する「再入国許可書」を旅券(パスポート)代わりにすることが必要となる。

 これに加えて、外国籍者はその国籍にかかわらず、日本に再入国するための手続きとして事前に法務大臣から再入国許可を受けることが必要である。

 海外渡航するたびに許可を受ける必要があったのだが、2012年からはこれが免除される「みなし再入国許可」という制度が開始された。これは、在日外国人が「有効な旅券」を所持していることを条件に、日本出国の日から1年以内(特別永住者の場合は2年以内)に再入国する場合に限り、再入国許可の取得を不要とする制度である。

 これは非常に便利な制度だが、前述の通り日本政府は朝鮮民主主義人民共和国旅券を「有効な旅券」と認めていないため、仮に同国の旅券を持っていたとしても朝鮮籍保有者は制度の対象外となっている(その他の国の旅券を取得していればそもそも朝鮮籍ではないため)。

 再入国許可の手続きを踏めば海外渡航できるとは言え、朝鮮籍の問題は置き去りにされた形である。

 余談だが、朝鮮民主主義人民共和国旅券(再入国許可書の場合も含む)では査証(ビザ)を取得しなければ訪問できない国が多い。

 英企業「ヘンリー・アンド・パートナーズ(Henley & Partners)」が今年1月に公表したデータによると、日本国旅券は191か国(第1位)、韓国旅券は189か国(第3位)をビザなしで訪問することができるが、北朝鮮旅券がビザなしで訪問できるのは39か国(100位)にとどまっている。

朝鮮籍を選ぶ人と韓国籍を選ぶ人のそれぞれの思い

 法務省の統計データによると、1989年から2018年までの30年間で約23万人が朝鮮籍または韓国籍から日本国籍に帰化しており、直近5年間では年5000人前後となっている。実数は不明だが朝鮮籍から韓国籍への変更も毎年一定数存在している。

 日本国籍や韓国籍に変更した人たちに話を聞くと、必ずしも各政府を支持し、日本人や韓国人になりたくて積極的に国籍変更を希望する人ばかりではない。朝鮮籍では社会生活上で不便があることや、朝鮮籍というだけで「北朝鮮シンパ」に見られて差別を受けることがあるなどの理由から結婚や出産、就職などを機に国籍を変更する人もいる。

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