「核心技術が台湾に流出」と韓国メディア報じる

「核心技術が台湾に流出」と韓国メディア報じる

張保皐級潜水艦・李阡 出典 Craig P. Strawser, U.S. Navy [Public domain], via Wikimedia Commons

 「韓国海軍が最新鋭潜水艦に採用している核心技術が台湾に流出した」と、6月6日から7日にかけて韓国メディアが一斉に報じている。

 韓国警察は、今年3月に事件にかかわったとされる造船関連メーカー3社と関係者3人を検察に送致した。

 容疑者らは1500億ウォン(約159億円)の報酬を約束され、台湾企業の潜水艦建造プロジェクトに参加。20人以上の技術者を台湾へ派遣し、潜水艦に関する図面の一部を無許可で国外に持ち出していたという。

 これがSNSでも話題となって「韓国には産業スパイが多すぎる」と、怒りの書き込みが殺到。また、「独自建造できる技術がないのか?」といった台湾への嘲笑も目についた。

 確かに台湾には潜水艦建造の経験がなく、技術を欲しているというのは間違いない。

 が、韓国の潜水艦技術は…「スパイを使ってまで求める価値があるのか?」それについては少し疑問だ。

果たして盗む価値のある技術か?

 韓国はドイツ製潜水艦を輸入し、やがてライセンス生産を行うようになる。

 しかし、建造技術の未熟さから近年でもトラブルが頻発。自国では解決できず、修理や改良をドイツ側に委ねることが多かった。これではとても潜水艦技術の「先進国」と呼ぶことはできない。

 台湾に技術が流出したのは、韓国海軍の最新鋭潜水艦「張保皐3級」の核心技術だとされている。

 韓国が初めて独自設計したと主張する3000トン級の大型艦だが、こちらも実際は、ドイツが韓国の次期潜水艦として提案したDSX-3000の設計をほぼ踏襲したものだという。

 どこの国でも輸出兵器に自国の最新技術を採用することはしない。

 ドイツでも韓国に供与する潜水艦技術については、同様の判断をしている。その技術的価値については、察することができるだろう。

 また、台湾が建造するのは2000トン級の潜水艦であり、3000トン級の張保皐3級とではサイズがかなり違う。装備品や設計図を入手したとしても、変更点が多く手間かかるだろう。

台湾は米英の技術供与で潜水艦を建造

台湾は米英の技術供与で潜水艦を建造

韓国の報道を台湾外務省が否定したと報じる台湾メディア 出典 自由時報

台湾は米英の技術供与で潜水艦を建造

 台湾では80年代にオランダから購入した2000トン級潜水艦が老朽化し、2017年に新型潜水艦建造プロジェクトをスタートさせている。

 このプロジェクトには、潜水艦建造で実績のある欧米諸国が協力を約束。

 米国は戦闘システムやソナーなどの核心技術を。また、英国も潜水艦部品やソフトウェアなどを提供する。

 先進諸国からの技術供与があれば、なおさら韓国の技術を盗む必要はない。

 台湾側でも韓国の報道を否定している。

 韓国側は、潜水艦の油水分離装置やバッテリー固定装置などの潜水艦技術を盗まれたと主張するが、台湾ではこれを海洋プラントに必要な風力発電部品に採用したものだという。

 また、技術資料の提供を受けたことはなく、韓国企業に依頼したのは主にコンサルティング業務という。

 容疑者たちは警察の取り調べに対して、

 「違法になるとは思わなかった」

 と、自供したとか。潜水艦建造に精通した者たちには、さほど重要な核心技術と思えなかったのかもしれない。

 一説によれば、「台湾の事業に携わる韓国人が、以前勤務していた韓国企業の経営者とトラブルを抱えており、経営者側が退職者をおとしめるために情報を捏造(ねつぞう)してリークしたのではないか?」と、そんなうわさ話も流布しているという…。

 この話のほうが信ぴょう性あるような。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

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