北朝鮮人600人が生活していた大連

北朝鮮人600人が生活していた大連

中国で2都市のみ残る路面電車。日本時代から走る大連トラム201路

北朝鮮人600人が生活していた大連

 現在では、国連の経済制裁強化の影響で少なくなっているが、制裁強化前まで中国東北の主要都市には北朝鮮人駐在員が多く住んでいた。

 大連は、大連港から南浦港への国際貨物船が運行されていたこともあり、最盛期には600人ほどの北朝鮮人が住んでいたという。職業は様々だが貿易関係者が多く、家族で生活している北朝鮮人も少なくなかった。

 中国など海外の都市に住む在留北朝鮮人は、班に組み入れられ、ピラミッド構造の組織で相互監視をしながら管理される。2014年の大連の北朝鮮人組織のトップは女性だったそうで、トップを務めるのは、北朝鮮の官公庁からの派遣者が担うことが多いとされる。

 北朝鮮は海外でも脱北防止のためか相互監視のような仕組みを用いて人的管理をしている。ヨーロッパへ派遣されて脱北した留学生や労働者の話からも世界中で同じような監視体制を用いて海外に滞在していても思想統制が維持できるようになっている。

公立中学へ転校してきた北朝鮮人

 大連で人材派遣会社を経営する朝鮮族の許さんは、長男が中学時代に北朝鮮人の子どもと同級生だったことがある。

 中国では、朝鮮族やモンゴル族、回族など少数民族はそれぞれの民族学校が認められている。しかし、近年は漢民族との同化が進んでいることや少数民族が多数を占める自治区以外の都市では少数民族の学校は少なく、大連は朝鮮族の学校が1校のみとなっている。そのため、居住地や通学の問題で大連の朝鮮族は漢民族が通う“普通の学校”へ進学する子どもたちも少なくない。

 許さんの長男C君も小学校から漢民族の学校へ通っていた。C君は両親ともに朝鮮族で4世になるが、朝鮮語は聞き取れるも、学校や友だちの影響かあまり朝鮮語は話せなかったという。

 C君が中学校のときに平壌から男子生徒が転入してきた。父親は貿易商だったそうだ。許さんはC君に困っていることがあったら助けてあげなさいと話したという。

中国の中学校は日本よりハードスケジュール?

 中国の公立中学校には日本のような部活動はない。その代わり授業が日本より多く午後5時ごろまであり、その後、英語や数学などの塾で学ぶなどのハードな生活をしている子も多い。

 北朝鮮からの転入生は、学校には最後までいるが、放課後、遊びに誘っても断りまっすぐ帰宅していたという。学校での態度は真面目で、学校遠足や行事などには不参加だった。

 当初はC君にもあまり心を開いてくれなかったそうが、C君も朝鮮語を学ぶ意欲が高まったのか積極的にコミュニケーションを取るようになって仲良くなっていったという。

平壌にはゲームもコーラもない

 ある年の春節(旧正月)休暇。中国の学校の冬休みに相当する春節休暇は1月末から1か月間ほどの休みとなる。その後、中国の新学期となる3月上旬から春学期が始まるのだが、北朝鮮からの同級生は、春節休暇中の帰国を嫌がっていたという。

 C君が理由を尋ねると、「平壌へ戻ってもやることがない。ネットゲームも遊べないし、コーラも飲めない」と言ったそうだ。

 大人だと決して口にできない中学生らしい本音だろうか、それまで北朝鮮の実情にあまり関心がなかったC君は驚いたという。

 北朝鮮からの同級生は、中学卒業前に帰国してからは会っていない。C君は、高校進学後、それでまでほとんど話せなかった朝鮮語がメキメキ上達していき、大学卒業と当時に韓国企業へ就職し、現在は、ソウルで国際金融の仕事に従事している。 

 北朝鮮からの同級生の存在がもしかしたらC君の民族性を刺激し、彼の将来へ多少の影響を与えたのかもしれないと許さんは話す。

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