北朝鮮らしさも私物もほとんどない

北朝鮮らしさも私物もほとんどない

広州の集合住宅。現代中国で新しく建てられる一軒家は非常に少ない

北朝鮮らしさも私物もほとんどない

新型コロナで戻れなくなった北朝鮮人夫妻の部屋で見たもの(1/2)の続き。

 劉さんは中国当局の規則に従い賃貸契約終了1か月後に部屋へ入り、大家の所有物である備えつけの家具家電の確認や戻ってこない北朝鮮人夫妻の私物を処分することになった。私物の処分費用は劉さん持ちとなる。

 9月末、劉さんが部屋に入ると、懸念していた所有の家具家電は欠けることなくそろっていた。一方、北朝鮮人夫妻の私物は驚くほど少なく男女用の衣類、肌着数着、食器、生活雑貨くらいしかなかった。

 劉さんからシェアしてもらった写真を見る限り、金日成主席と金正日総書記の肖像画もなく、書籍や書類など“北朝鮮らしさ”を感じさせる痕跡は写真からは確認できない。

 これはどいうことだろうか。

 元々北朝鮮人夫妻は一時帰国で帰国したまま中国へ戻れなくなったと考えられ、新型コロナ対策による国境封鎖がなければ、今年も賃貸契約を更新したはずと劉さんは考えている。そのため、夜逃げではないので私物は残っていたはずだ。しかし、部屋は、ほとんどもぬけの殻に近い状態だった。

海外に住む北朝鮮人も人民班へ属し生活総和を実施

 劉さんは自分たちの私物である家具家電が盗まれたのではと心配していたので、すべてそろっていることに喜んでいるが、気になったので北朝鮮国外での北朝鮮人の生活実態に詳しい関係者へ見解を聞いてみた。

 「中国に限らず、北朝鮮国外に居住する北朝鮮人たちは集団で工場などで働いていれば職場単位、今回のように一見すると自由に暮らしているように思える夫婦も同業種などを1つの班(人民班)として管理されていると思われます。大使館や領事館、出張事務所があれば、それらが担当し、領事館がない地方都市や地域の場合は、貿易代表部が監視の役割を果たします。週1回、土曜日が多いようですが、班ごとに時間帯をずらして集めて『生活総和(相互に批判する集会=義務)』を実施しています。

 個人名で賃貸契約を結んでいるアパートなども貿易代表部などは合鍵を持っていて、定期的に室内チェックをしています。今回のケースでは、中国へ戻れなくなって契約更新ができないことが早い段階で分かっていたので、見つかってSNSなどへ公開されると大問題になるような肖像画や書類、仕掛けていたかもしれない盗聴器などはすでに回収済みだと考えられます」(中朝関係者)

本当の夫婦だったかも今や不明

本当の夫婦だったかも今や不明

中国では隣人が北朝鮮人ということも起こりえる

本当の夫婦だったかも今や不明

 北朝鮮人が普通に賃貸契約を結んで隣に住んでいるという状況は国交がない日本では想像することは難しいが、中国では隣に北朝鮮人が住んでいるということはありえるのだ。

 劉さんは金払いがよかったのか次も北朝鮮人に貸したいと話す。しかし、今となってはいなくなった北朝鮮夫妻が本当に夫婦だったかも知るすべはない。

 賃貸契約が途絶えてしまい次の借り主が見つかるまで賃貸収入が途絶えることになった劉さんの悩みはまだ続きそうだ。

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