1月からの鉄道輸送再開で貿易拡大

1月からの鉄道輸送再開で貿易拡大

鴨緑江断橋

 中国税関総署が3月18日に発表した貿易統計によると、北朝鮮と中国の今年1月と2月の貿易総額は1億3600万ドル(約164億円)であった。

 前年(2021年)同期の372万ドル(当時のレート換算で約4億円)から約36倍の大幅増である。

 北朝鮮は、新型コロナウイルス対策として2020年1月から国境を封鎖していたが、今年1月に中朝間での鉄道輸送が再開したことで、貿易拡大につながったとみられる。

 ただ、中朝貿易は現在も限定的であり、封鎖前の水準までは回復していない。

前年同期比で対中輸入が3524倍に。輸出は低調

 今年1、2月の中朝貿易のうち、北朝鮮の中国からの輸入額(対中輸入)は、約1億1630万ドル(約140億円)であった。

 前年同期は、輸入額が3万3000ドル(約340万円)と最も減少していた時期であったため、輸入額だけ見ると3524倍となっている。

 一方、北朝鮮から中国への輸出額(対中輸出)は、前年同期の約1995万ドル(約24億円)となっており、伸び悩んでいる。

 陸路貿易は再開したものの、その実態は中国から北朝鮮への輸送、つまり、対中輸入がほとんどとみられており、このことが貿易統計でも示された形だ。

医療用品の輸入拡大、鉱物資源を輸出

 同期(1~2月)における、北朝鮮の中国からの輸入品で目立ったのは、プラスチックや医療用品、小麦などである。

 同期における医療用品の輸入額は、1049万ドル(約12億7000万円)。月別では、1月が515万ドル(約6億2000万円)、2月が534万ドル(約6億5000万円)となっている。

 昨年11月の320万ドル(約3億9000万円)、12月の275万ドル(約3億3000万円)から今年は医療用品の輸入額が約2倍に増加している。陸路輸送再開を受け、医薬品を優先的に輸入しているものと考えられる。

 一方、輸出面では、鉱物資源であるモリブデンやタングステンを中国に輸出している。

 これらは、北朝鮮が埋蔵量で世界トップ10に入っている鉱物である。

 昨年は、若干量のタングステンを中国に輸出していたが、モリブデンの輸出は確認されていない。

国境封鎖前の約半分の貿易水準

 前述の通り、1、2月の貿易総額は、前年同期から36倍に増加しているが、そもそも、この期間は、すでに国境封鎖によって中朝貿易が低迷していた。

 国境封鎖の影響がなかった2019年の同期と比べると、半分程度の水準しかなく、中朝貿易はいまだに限定的だ。

 北朝鮮は現在も、新型コロナ対策として、非常防疫体制を徹底しており、貿易拡大には慎重とみられる。

 ただ、2年間にわたる中朝貿易の低迷によって、物資不足など北朝鮮経済への影響は大きく、貿易拡大が経済建設に必要なのも事実。
 
 今後、金日成(キム・イルソン)主席生誕110年周年(4月15日)や、稲作が控えており、中朝貿易は拡大するものと予想される。

八島 有佑
@yashiima

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