北朝鮮の人々を映した映画の舞台裏をユーモアを交えて紹介したチョ・ソンヒョン監督

北朝鮮の人々を映した映画の舞台裏をユーモアを交えて紹介したチョ・ソンヒョン監督

5月12日に立教大学で行われたシンポジウム「北朝鮮とコリアン・シネマ」

 映画『ワンダーランド北朝鮮』の日本公開に先立ち、5月12日(土)、立教大学でシンポジウム「北朝鮮とコリアン・シネマ」が開催された(主催 立教大学異文化コミュニケーション学部、後援 「みすず書房」、「ユナイテッドピープル株式会社」)。

 このシンポジウムでは、立教大学異文化コミュニケーション学部の李香鎮教授による講演のほか、北朝鮮ワンダーランドの試写会、チョ・ソンヒョン監督と李教授などによる座談会が行われた。

 座談会でチョ・ソンヒョン監督は、「韓国の映画祭でさえ上映を断られることがあったので、この映画が日本で上映されると知りとても嬉しかった。北朝鮮にも社会があり、人々が住んでいることを皆さんにもぜひ感じてほしい。この映画を撮るにあたり、誰を撮影するか当局が指名した数人の中から選ぶことができ、よく話してくれてカッコイイ人を選んだ。元山の裁縫工場職員にインタビューする際は、指名された者以外の他の人がよいと伝えると、工場の職員から自由に選んでインタビューすることができた。映画撮影の間は、現地の「高麗映画製作会社」の社員が監視役として同行していたが、やはり第三者がいると雰囲気が重くなりインタビューも弾まなかった。そこで、話し合った結果、インタビュー中は席を外してもらえた。映画制作にあたり、唯一当局にカットするように指示されたシーンは、元山の裁縫工場で作られる製品のタグがはっきり映っていたシーンだった。この製品はアメリカやカナダに輸出されている。工場でお土産としてもらったパンツは、北朝鮮では考えられないくらいセクシーだったので、ドイツに持ち帰ってもはくことができなかった」などとユーモアを交えながら撮影の裏話を披露した。

 また、チョ・ソンヒョン監督は、壇上から会場の写真を撮ったり、座談会の終わりにシンポジウム参加者から質問を受け、質問者にはドイツ土産をプレゼントしたりするなど、親しみやすい一面も見せてくれた。

韓国出身の女性監督がドイツ籍に変えて北朝鮮に住む普通の人々を記録したワンダーランド北朝鮮

韓国出身の女性監督がドイツ籍に変えて北朝鮮に住む普通の人々を記録したワンダーランド北朝鮮

チョ・ソンヒョン監督(5月14日に講談社で行われた『ワンダーランド北朝鮮』無料試写会&監督来日トークイベントより)

韓国出身の女性監督がドイツ籍に変えて北朝鮮に住む普通の人々を記録したワンダーランド北朝鮮

 北朝鮮の人々の暮らしや生活に対してはっきりとしたイメージを持っている人は多くないだろう。実際にそこに住んでいるのは、どのような人々で、どのような暮らしを送っているのか。韓国出身のチョ・ソンヒョン監督は、このような疑問に答えを出すべく、国籍を変えドイツのパスポートで北朝鮮に入国し、住民への取材を敢行した。インタビューならびにその取材の過程を映像に収めたドキュメンタリー映画がワンダーランド北朝鮮である。

 ワンダーランド北朝鮮は、2016年に制作され、日本でも2018年6月30日から東京都シアター・イメージフォーラム、京都府出町座などで順次公開予定。

チョ・ソンヒョン監督プロフィール

 チョ・ソンヒョン監督は、1966年韓国釜山市生まれで、現在、ドイツのザールブリュッケンの単科大学で映画制作を教えている。延世大学でコミュニケーション論を学んだ後、1990年にドイツのフィリップ大学マールブルクに留学した。卒業後、ドイツのテレビ局で編集の仕事に携わる傍ら、短編ドキュメンタリー映画の制作を行っている。

分断・戦争・反共・脱北者から共存共栄・一般の人々へと映画題材の変遷。コリアン・シネマを通じて見る北朝鮮

 李香鎮教授は、映画などの大衆文化を通じて韓国・北朝鮮社会を多角的に分析する研究に取り組む、コリアン映画研究の第一人者である。

 「北朝鮮を題材にしている映画は多いが、朝鮮半島の平和的共存が可能かどうか映画を通して考察したい。60年代の韓国映画では、分断・戦争をテーマにしたものが多かった。60年代半ばに入ると、政府の検閲が厳しくなり、北朝鮮を題材にした映画の人気と作品性は落ち、韓国政府の北朝鮮観を表している映画しか見られなくなった。当時の北朝鮮のイメージは、忘れられない故郷であり家族というものであった。その後は、政府主導の反共映画が多く作られるようになった。それらの映画中における北朝鮮は、愚かな兄として表現された。しかし、韓国の民主化以降、近年では、北朝鮮人役にアイドルスターが抜擢されるようになり、北朝鮮に対するイメージが変わってきた。また、2000年に入ると、分断だけでなく、脱北者をモチーフにする作品が登場してくる。このように、私たちが他の国に対して持っているイメージは、私たちが望むイメージである。そして、このイメージを作るのは、一般市民である。市民たちが平和を望むときは、現在の韓国映画が表現するような温かくハンサムな北朝鮮人像になる。これは、一緒に住みたい、話してみたいと思う人々がたくさんいるからである。今後の南北関係や朝鮮半島の平和的な共存の行方がどうなるか、私には分からないが、政治家だけでなくこれを望む一般市民の思いが大切である」と李教授は、講演「北朝鮮を観るシネマティック想像力」の中で語った。

「これはプロパガンダか?それとも現実か?」ワンダーランド北朝鮮は北朝鮮の「生」を感じられる映画

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ワンダーランド北朝鮮のフライヤー。6月30日から全国順次ロードショー

 私たちが普段、接する北朝鮮に関する情報では、北朝鮮の人々の暮らしはなかなか見ることができない。そのため、このような映像作品はとても貴重なものといえる。

 北朝鮮の人々の人間味あふれる生活や姿がありありと感じられる作品となっているので興味を持った方はぜひ劇場へ足を運び、北朝鮮に暮らす人々の本当の姿を自身で感じ取ってみて欲しい。


映画『ワンダーランド北朝鮮』予告編 2018.6.30公開!

配給 ユナイテッドピープル

立山達也

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