どうやって鴨緑江を渡る?謎のラストワンマイル

どうやって鴨緑江を渡る?謎のラストワンマイル

中国までラストワンマイルとなる中朝国境の新義州青年駅ホーム

どうやって鴨緑江を渡る?謎のラストワンマイル

中朝貿易の謎のラストワンマイル 北朝鮮産品が鴨緑江を越える方法(1/2)の続き。

 ここで疑問となるのは、チマチョゴリの生地や完成させたポジャギ製品をどうやって中国へ運んでいるのかだ。

 そのまま丹東へ“正規に”入国すれば貿易にカウントされるので貿易額へ反映されるはずであるが、カウントされているのかと尋ねると、合法だと述べるだけで、詳細は濁す。

 丹東との対岸の新義州までは列車で輸送しているようだが、そこから先の国境河川である鴨緑江を越えるラストワンマイルをどうやって運んでいるのが不明だ。

密貿易を理由に営業が全面停止されたモーターボート観光

 「丹東名物だったモーターボート観光を禁止をする理由は、北朝鮮からの密貿易防止ためとの説明を受けました」(丹東の旅行会社)

 以前、KWTで伝えた観光客に人気だったモーターボート遊覧が昨年春から禁止されて、丹東から北東に50キロメートルほど離れたもう1つの断橋と呼ばれる河口断橋までモーターボート遊覧は禁止された。

 どうやら丹東の旅行会社関係者によると、平壌から運搬した品々は新義州駅で降ろしてトラック等で鴨緑江まで運び、真っ暗になる夜間に鴨緑江をボートや小型船で往復させて丹東へ運んでいるというのだ。つまり、完全な密貿易となる。

 密貿易なので当然、税関を通らずそのまま丹東と韓国仁川を結ぶ国際フェリーへ積み込まれて韓国へ運ばれていく。

北朝鮮産の松茸も密貿易で中国へ

北朝鮮産の松茸も密貿易で中国へ

川幅が狭い場所だと浅瀬で幅数メートルの水域もある鴨緑江

 国連制裁により貿易が制限されているはずの北朝鮮では、漢民族や満州族の中国籍でありながら北朝鮮へ精通している華僑たちの手によって、丹東へのラストワンマイルをボートなどへ積み替えることで鴨緑江を密かに渡して突破している。

 「同じ方法を使って北朝鮮から松茸も中国へ持ち込み、吉林産などへ産地を変えて日本へ輸出しています。朝鮮産は、原価と人件費が安いので吉林産の半分から3分1程度で仕入れることができます。今頃の時期が例年、日本への輸出ピークですかね」(前出の旅行会社関係者)

 楽天やヤフーショッピングで松茸を検索すると、高級な国産以外にも外国産として、中国、カナダ産が多く売られている。中にはトルコやモロッコ産などもある。昨年まで多かった韓国産は見かけなくなっている。

姿を消した吉林産マツタケ。専門家でも偽装を見破るのが難しい

 日本では販売する輸入食品、食材には、生産国を明記することがJAS法で義務付けられている。ここでポイントは、表示するのは生産国のみで、生産地の表示義務はないとのことだ。

 その点を踏まえて、改めて楽天やヤフーショッピングの中国産の松茸を見てみると、多くの販売者が産地は書いていない。数店、長白山産という松茸を見つけた。長白山は、北朝鮮が聖地とする白頭山の中国語名だ。

 中国の松茸の産地は、長白山がある東北の吉林と南の雲南の2か所が知られている。中でも吉林産の松茸は見た目、香り、味ともに国産にもっとも近いと言われ人気がある。そのまま陸続きで同じ土壌を共有する北朝鮮産も吉林産とほぼ同じか、やや小ぶりくらいで区別は専門家でも難しいほど類似している。
 

今晩、口にする中国産マツタケ、実は北朝鮮産かも…

今晩、口にする中国産マツタケ、実は北朝鮮産かも…

中国最大手「淘宝網」で販売されている松茸。雲南産は国産よりもヒョロと細長い形状をしている

今晩、口にする中国産マツタケ、実は北朝鮮産かも…

 数年前に北朝鮮からの偽造松茸がニュースとなり話題となった影響でイメージが悪いのか吉林産という記載はめっきり少ない一方、雲南は、ヒマラヤの麓、桃源郷シャングリラなどを大きくアピールしている。

 雲南産は、明らかに北朝鮮産とは見た目も異なっているので偽造品が混ざるリスクが低いからかもしれない。吉林産とあえて表記しないのは、今年もラストマイルを超えて北朝鮮からの偽造松茸が多く日本へ輸入されていて輸入している業者でもはっきりとは区別がつかないからであろうか。

 季節は、食欲の秋。松茸ご飯、土瓶蒸し、贅沢にそのまま焼いて香りを楽しみながら食べるなんて食べ方など、松茸はまさに秋の味覚の王様。だがしかし、もしかすると、今晩、あなたが食べる中国産松茸は、実は北朝鮮の山で取られてラストワンマイルを超えてきた松茸かもしれない。

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