北朝鮮の知られざる経済の実態が明らかに

 この数年、北朝鮮がどのような道筋を描きながら前進しているのかということがよく分かる本が河出書房新社の『北朝鮮 おどろきの大転換』(2018年10月発刊・KBS「だれが北朝鮮を動かしているのか」制作班 著)だ。同書は韓国「KBS」が1年半におよぶ関係者への綿密な取材とネットワーク分析によって、北朝鮮の知られざる「真実」を明らかにしている。

金正恩政権を支えるパワーエリートの動向と海外派遣の労働者の実態を探る

 以下、『毎日新聞』部長委員の鈴木琢磨氏の解説を紹介しよう。

 「これほどまでにドラスチックな朝鮮半島情勢の大転換を予想していたメディアは日本はむろん、韓国にもなかった。だが、取材チームは冷静な取材を続けていた。北朝鮮の内部映像の入手に奔走したり、専門家の解説を引いてお茶を濁そうとはしなかった。

 公開情報をもとにしたビッグデータの解析で、金正恩を支えるパワーエリートの動向を追い、海外に派遣された北朝鮮労働者の実態を探ることで、知られざる経済の実相に迫っていく。

 このふたつのアプローチによって、明らかになったことはシンプルながら、きわめて重要な事実であった。三代世襲の王朝国家でありはするが、それなりのシステムがあり、ロードマップがあるということ。

 そして金正恩も緻密な国政目標を持った指導者だということである。その求めているものはズバリ、経済の立て直しだ」──鈴木琢磨(毎日新聞部長委員、本書「解説」より)

ドキュメンタリー「だれが北朝鮮を動かしているのか」から書籍化

ドキュメンタリー「だれが北朝鮮を動かしているのか」から書籍化

外貨不足で経済危機が懸念される北朝鮮経済

 北朝鮮 おどろきの大転換は、KBSがイギリス「BBC」、ドイツ「ZDF」と連携し、1年半にわたりヨーロッパ、アジア各地の取材、調査を敢行したドキュメンタリー「だれが北朝鮮を動かしているのか」を書籍化しているので非常に読みやすい。ちなみに同番組のプロデューサーは「特別企画 金正日」(2010年)制作をきっかけに、北朝鮮関連の番組を多数制作しているリュ・ジョンフン氏。

 実際に読んだ人からは、「この本を読んで、北朝鮮の実像を知ることができ、とても参考になった。朝鮮半島を中心に世界中が慌ただしく動きはじめた。遠い昔から切実に平和を望んできた私たちの思いが、新しい時代を切り開こうとしている、という文章が印象に残った。本当にそう思う」というコメントも寄せられている。
 
 今の北朝鮮の実情を知りたい人はまず手にとって欲しい1冊だ。

過去最強の国連制裁履行で激減するドルヒーローズたち

 アメリカ政府の推計によると、北朝鮮は労働者10万人ほどを海外へ派遣し外貨獲得に従事させている(この海外派遣労働者=ドルヒーローズと表現)という。特に多いのが労働者として重宝されるロシア約3万人と中国約5万人とされる。しかし、2018年1月の現地との合弁企業廃止と昨年12月21日までに北朝鮮人労働者を帰還させることを決めた2度の国連制裁の履行により大幅に減少している。

 ロシア外務省は今年1月23日にロシア国内に1000人ほどの北朝鮮人労働者が残っていることを明らかにしている。しかし、就労ビザから学生や出張、公用ビザなどを取得することで非労働者として合法的に滞在しているとの報告もある。

井上 一希

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