1件も検索されないアカデミー賞ニュース

1件も検索されないアカデミー賞ニュース

国籍は中国と表記されている百度百科のクロエ・ジャオ(趙婷)ページ

1件も検索されないアカデミー賞ニュース

 今年のアカデミー賞「監督賞」に中国出身のクロエ・ジャオ監督が受賞。アジア人女性初の受賞という快挙だ。2021年のアカデミー賞では、ジャオ監督の「ノマドランド」が作品賞、監督賞、主演女優賞の3冠に輝く。

 しかし、中国はわかりやすく情報統制を実施して受賞に関するニュースを封殺している。正確には、封殺しているのは、中国国営や中国共産党機関紙など官製メディアで、これらでは、ジャオ監督のアカデミー賞3冠の快挙が一切確認できない。

 中国最大のポータルサイト百度(バイドゥ)では、ジャオ監督個人のプロフィールや3月以前のニュース記事が数件ヒットする。この点から、どうやら検閲NGワードにはなっていないようだが、アカデミー賞関連のニュースは1件も検索されない。

アカデミー賞=反中イベント?

 コメントが書き込めるSNSではどうか。微博(ウェイボー}は、官製メディア以外のアカウントが、アカデミー賞を獲得したニュース投稿している。しかし、いずれも官製色が濃いアカウントからの投稿と見受けられる。これをもって中国は報道の自由も言論の自由も侵害していないと根拠に挙げるのだろう。

 書き込まれているコメントを拾い上げると、実は、受賞を祝ったり快挙を喜んだりするコメントも確認できる。だが、「彼女はすでに米国に魂を売った」「中国が嫌いなら戻ってこなくていい」「アカデミー賞なんて価値がない」などのジャオ監督への個人批判が目立つ。

 確認できる受賞を喜ぶコメントは、書き込み日時が27日など新しいため、近く削除される可能性がありそうだ。そもそも中国政府は、アカデミー賞をノーベル賞と同じく欧米の都合で作られた反中イベントと定義していて、賞の価値自体を認めていない。

熱い視線を送る北朝鮮

熱い視線を送る北朝鮮

ウェイボー投稿のコメントはクロエ・ジャオ監督への個人攻撃が多い

熱い視線を送る北朝鮮

 日本の報道によると、話題になった2月段階では、中国官製メディアでも大きく報じていたが、ジャオ監督の中国の体制批判とも受け取れる発言が掘り起こされて規制対象になったと報じている。

 中国は中国共産党批判はおろか、国家への建設的な提言ですら一切容認しない。中央政府への一切の批判も意見も認めない点は北朝鮮も同様で、日本から見ると、度量が狭く子どもじみた露骨なメディアでのネット統制を北朝鮮は、今後のために熱い視線で見守っているとみられる。

 中国政府は、中国共産党や体制への批判を強行圧殺する対応を建国以来繰り返してきた。その理由は、中国共産党の正当性を誇示するために前例踏襲を何よりも重要視しているからだ。それもあって、今さら改められないという事情も背景にはある。

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