福島第1原子炉力発電所を視察するラファエル・グロッシIAEA事務局長(2020年2月26日) 出典 IAEA Imagebank [Public domain], via Flickr

 2011年に発生した東日本大震災。その影響で東京電力福島第1原発事故が発生し、福島県では帰還困難区域などが設定された。この事故は韓国の社会にも大きな影響を及ぼし、のちの文在寅大統領になってから韓国の新古里原発5、6号機の建設を中断するに至った。

 最近も福島第1原発の廃炉作業から出る原発処理水の放出に主に韓国と中国。他にも北朝鮮、ロシア、台湾から批判が出るなど何かと原発に関する話題が多いこのごろである。今回は韓国の原発政策と福島第1原発事故を絡め、原発事故が韓国の原発に与えた影響を見ていく。

文大統領の脱原発政策。原発建設を白紙に

 2017年の韓国大統領選挙に立候補した文在寅(ムン・ジェイン)候補(現大統領)は、当時から公約として「脱原発」を掲げ、大統領に当選した。2012年のデータによると、韓国では4つの原子力発電所21基が稼働中で、5基を建設中だったという。

 文大統領は、原子力発電を用いるエネルギー政策からの脱却を図り、再生可能エネルギーなどを中心とした政策へと方針転換。原発建設も白紙となった。ただし、この政策には痛みも伴うようだ。韓国・中央日報は、再生可能エネルギーに舵を切ると、電気料金が大幅に値上げされる可能性もあると報じている。

原発事故の韓国社会への影響と原発反対運動

 この背景にあるのは、まぎれもなく福島第1原発事故などの影響が大きい。実際、原発事故が発生した2011年には、韓国国内で販売されていた放射線測定器が品薄になるほど。それに加え、共同通信は2016年に発生した韓国東南部での地震の影響も原発に対する不安に関係していると分析した。福島第1原発事故が韓国の社会に与えた影響は計り知れないものだった。

 名古屋大学の研究資料(※PDF)では、韓国国内でも事故前から「反原発運動」はあり、事故後には「脱原発運動」となって展開された。さらに、事故前は原発近くに住む住民を中心として反対運動が行われていたのに対し、事故後はメディアや議員など、多種多様な人々によって反対運動が行われるようになったと指摘している。

エネルギー政策転換と今後への課題

 事故後、韓国のエネルギー政策が原発中心から「グリーンニューディール」をはじめとする自然を生かした再生可能エネルギーへと変化した点は評価できる。

 しかし、韓国政府が行ってきた原発事故後のあからさますぎる政策転換と、日本を矛先にして行われる批判は、ときに対立を生んでしまう。日本からすれば、「政策が急に変化し、韓国がやっていたことを棚に上げて日本批判を繰り返すのはなぜ?」と思うのは当然かもしれない。

 日本を批判するばかりではなく、韓国側も日本側に情報提供を行い、相互に協力をすれば、将来的な原子力発電や処理水問題、その他の問題の解決が近づく可能性も開かれる。感情的にならず冷静に現状を分析し、対処すればいい結果が待っているのではないだろうか。

小林 英介(こばやし えいすけ)
ライター。ウェブメディアで便利グッズから政治に至るまで幅広く執筆している。現在は「ピコピコカルチャージャパン」で連載中。過去の執筆媒体は「公務員総研」「まいどなニュース」など。
@chimata_score8i

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