内外環境に応じて方針を変えてきた北朝鮮指導者

内外環境に応じて方針を変えてきた北朝鮮指導者

30年で観光方針も案内される観光地も大きく変化した(写真は紋繍プール)

 もう1つ目的である外貨獲得についても、訪朝者数が少ない日本人相手では一定程度の成果しか挙げられていないのではなかろうか。但し、北朝鮮側が要求する旅行費用は、旅行者の国籍によって異なり、日本人に対しては最も高額の旅行費用を請求してきた経緯があるため、判断は難しい。

 金正日国防委員長は、1998年に次のように語っている。金日成の「教示」とは異なる文脈で語られており注目される。

 観光業を行い、資源などを売ってカネを稼いでいては経済を発展させることはできません。観光業を行うと、カネを少しは稼ぐことができるでしょうが、それはわが国の現実に合致しません。外貨を導入して経済を復興させようというのも愚かな考えです。あれほど困難であった戦後復旧建設の時期も、われわれは観光業や外貨導入などという言葉を知らずに生きました。われわれは絶対に他人のことを見る必要はありません。

 北朝鮮の最高指導者は、内外環境に応じて方針を変化させてきたことが分かる。金正恩政権に対して国連安保理による経済制裁が強化される中、合法的な外貨獲得の一手段として、制裁対象に入っていない観光分野を重視することは自然の流れであったともいえる。

礒﨑 敦仁(ISOZAKI Atsuhiro)
慶應義塾大学准教授。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部在学中、上海師範大学で中国語を学ぶ。慶應義塾大学大学院修士課程終了後、ソウル大学大学院博士課程留学。在中国日本国大使館専門調査委員、外務省第3国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、東京大学非常勤講師、ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員などを歴任。総合旅行業務取扱管理者。共著に『新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社、2017年)、共編に『北朝鮮と人間の安全保障』(慶應義塾大学出版会、2009年)ほか。

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