必要な資材を輸入できず大打撃の製造業
輸出品目については、2019年に輸入品目上位であったプラスチックや合成繊維などの資材が大幅に減少した。これらは製造業に必要不可欠であることから、北朝鮮の製造業に打撃を与えたものと考えられる。
他方、輸入に頼っている食用油や小麦粉、医療用品などが相対的に輸入品目の中で上位にきている。
ただ、2020年の輸入額1位となった食用油ですら前年比40%減で、全般的に輸入量は大幅に減少しており、北朝鮮国内での需給バランスが大きく崩れている可能性がある。
なお、コメやトウモロコシなど穀物の輸入は前年比99%減となったが、これらは自国生産が可能であるため影響は少なかったと考えられる。穀物類の市場価格の混乱は確認されていない。
新駐中国大使に経済専門家を任命
このように2020年は中国から必要な物資や資材が輸入できなかったことで、北朝鮮経済に大きな影響を与えたと考えられる。
それでも国境封鎖を断行しているのは、自国の医療体制や防疫体制を考えてのものなのだろう。
とはいえ、新型コロナの収束が見通せない中で、現在の国境管理体制を続けていくのが困難であることもまた事実である。北朝鮮は「自力更生」をスローガンに経済建設を進めているが、すべてを短期間で自給自足することはどこの国でも難しいからである。
そのため、部分的に物流制限を緩和していく可能性がある。
実は、新しく駐中国大使に李竜男(リ・リョンナム)元副総理が任命されたことが2月19日に発表されている。
李大使は歴代駐中国大使と比較すると外交経験は豊富ではない。一方で、貿易部門に長年携わり、対外経済相や貿易相を歴任するなど経済の専門家と評価されている。
経済専門家が起用されるのは異例であり、中国との経済協力を強化するための動きとみられる。
北朝鮮が推進する経済建設においては、今後も中国との貿易や経済協力が鍵となると考えられ、国境管理体制との間でどのようにバランスをとるのか注目したい。
八島 有佑