前日(21日)には、訪韓した米国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表が「我々もまた、どちら(対話と対決)に対しても準備ができている」「条件なしでいつでも会うことができる」と表明している。

 キム氏はソウル滞在中(19日~23日)に、日米韓の北朝鮮当高官による3者協議に臨んでおり、日米韓3か国としての対北方針とも言える。
 

2つの談話は米朝間の認識のずれを指摘した可能性

 さて、対話を表明する米国に対して、なぜ金与正氏は、冷ややかな談話を送ったのだろうか。

 前提として、最高指導者である金正恩総書記が表明した「対話と対決」方針を金与正氏や李善権氏らが簡単に覆すことはありえない。その上で2つの談話をよく読むと、米国との対話を全否定しているわけではないことがわかる。金与正談話では「誤った期待」、李善権談話では「無意味な接触」と言及しているが、「対話に対して北朝鮮と米国の間で認識に隔たりがある」と遠回しに主張していると解釈できる。

 たとえば、キム特別代表は「無条件談話」を呼びかけたが、北朝鮮側はこれまで一貫して「板門店宣言」(2018年4月南北合意)および「シンガポール合意」(6月米朝合意)の遵守を呼びかけ、米国に対して対朝鮮敵視政策(制裁等)の撤回を求めてきた。そもそも北朝鮮は条件付けを行なっているのであり、無条件対話には慎重になるだろう。このような認識のずれを北朝鮮側は感じているものと考えられる。

 米朝・南北関係が良好であった2018年時ならともかく、「次はシンガポール合意に基づいて米国が具体的措置を実施すべき」と主張してきた北朝鮮からすれば、米国の具体的行動の提示なしに北朝鮮が対話に応じる可能性は小さいのだ。

 とは言え、金正恩総書記が「対話」という選択肢を表明した通り、米国との対話は期待するものである。そのため、やみくもに「対決」の選択肢をとることもないだろう。北朝鮮としては対決の道もあると考え「自力更生」の覚悟も決めて対話と対決を両にらみしている状況であり、いずれの道にも舵を切れる準備を進めていると言える。

 北朝鮮と日米韓双方が、水面下でどのような選択肢や条件を提示していくかが鍵となるであろう。

八島 有佑
@yashiima

記事に関連のあるキーワード

おすすめの記事

こんな記事も読まれています

コメント・感想

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA