30億回以上も閲覧された原作漫画

30億回以上も閲覧された原作漫画

美容大国で知られる韓国

 9月23日に日本でも公開された韓国発のアニメ映画「整形水」は、美に対するすさまじい執着を描いた背筋が凍りつくようなサイコホラー作品である。

 ネット配信の漫画が原作だったが、こちらも世界中で30億回を超える閲覧回数を記録。韓国では広く知られ、映画化の以前から話題になっていたという。

 スタイリストの主人公の女性は、自分の容姿にコンプレックスを持っていた。テレビ局で美人タレントのメイクを担当し、罵倒され侮辱を受けたことで、コンプレックスはさらに強くなり、性格もしだいに歪んでしまう。そんな時、彼女に謎のメールが届く。添付された動画には、ある女性が「奇跡の整形水」を顔に塗ると、見る見る絶世の美女に変貌する様子が撮られていた。それに魅せられた彼女はメールの送り主を訪ね、2000万円を支払う約束をして整形水を入れた風呂に浸かる。その効果は絶大、顔もスタイルも別人の美女に生まれ変わることができたのだが…。

韓国人女子学生の過半数が美容整形に賛成

 整形大国と言われる韓国では、整形手術を専門とする美容外科やコスメが一大産業にまで発展している。人々は美容整形手術に対する拒否感が少なく、

 「二重まぶたにする程度のことは整形ではない」

 と、日本人女性がアイテープを貼り付ける程度の感覚で、気軽にメスを入れるという。

 大阪樟蔭女子大学や韓国の韓端大学などが合同で「日本人と韓国人の化粧観の国際比較研究」に関する学生のアンケート調査を行ったところ「美容整形を受けてきれいになることに賛成」という質問に、韓国人女子学生の50.3%はYESと回答したが、日本人女子学生の場合は15.6%。ここでも美容整形に対する意識の違いが鮮明に出ている。

 しかし、「安全性の不安がある」という質問には、韓国人女子学生はこちらも50.3%と多い。一方、美容整形に否定的な意見が多い日本人女子学生の場合、安全性については、さほど心配していない。自国の医療を信用しているのだろうか、不安を感じる人は14.6%という数字になっている。

話題のサイコホラーを生みだした土壌

 韓国は求人広告にも「容姿端麗」であることを堂々と求めるお国柄。韓国人の容姿への執着は強く、美しくなるためなら顔にメスを入れることもいとわないのだが、美容整形の安全性については、大きな不安を持っているようだ。韓国でも美容整形に躊躇(ちゅうちょ)する人は、それなりの数いるというが、それは日本のような倫理的な問題よりも、医療事故を恐れてのこと。それが一番の問題のようだ。

 韓国の美容整形では、医療ミスが多発しているという話はよく聞かれる。韓国の美容整形手術は料金の安いことでも知られるが、そのコストを削減するために経験の浅い医師を使ったり、中には医師免許のない怪しい人物が執刀するなどの噂が耐えない。過去には医療ミスもよく起きている。それだけに韓国人も自国の美容医療をまったく信用していないようで…。

 美への強い執着と整形手術失敗の不安。それが合わさった韓国民の複雑な心情が、話題のサイコホラーを生んだのかもしれない。


【本予告】新感覚<整形サイコホラー>映画 『整形水』9月23日(木)日本公開!(2021)
 

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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