不明点が多い海底火山噴火と津波

不明点が多い海底火山噴火と津波

津波と火山灰の被害を受けたトンガ王国

 1月15日午後1時10分頃、トンガ諸島沖の海底火山の大爆発が発生した。

 当初、日本の気象庁は「日本沿岸に津波が来たとしても20センチ・メートル未満」として津波警報の発令を見合わせている。

 しかし、深夜になって鹿児島県奄美諸島で1メートルを越える潮位の上昇が観測されて、気象庁も慌てて0時15分には、津波警報と津波注意報を発出した。

 当初の予測が甘く、津波警報発令が遅れたことは事実。だが、通常の地震による津波とは違って、海底火山噴火が津波を発生させるメカニズムには、不明な点が多く予測は難しい。

 日本ではそれを理解して、気象庁を非難する声は上がらなかったのだが、なぜか、韓国のマスコミがこれに激怒しているのだ。

「3メートル」の津波予測に韓国民が肩透かし

 気象庁は津波の高さを「3メートル」と予測して、8県の55市町村、約23万人に避難指示を出していた。

 本当にこれだけの規模の津波が起これば、大災害は避けられない。しかし、実際に日本沿岸に到達した津波は1メートル級で事なきを得ている。

 しかし、韓国のSNS見ると、を気象庁が予測した3メートルの津波に「期待」する声が多かった。

 2011年の東日本大震災や2016年の熊本大地震など、日本で大規模な自然災害が発生すると、韓国のSNSでは「天罰だ」などと日本をあざ笑うような書き込みが多く見られる。

 今回も3メートルの津波にそれを期待する不謹慎な輩は少なからずいただろう。予測が外れて肩透かしを食ったといったところか。

 欲求不満の矛先は、期待させるような予測を出した日本の気象庁に向けられる。

 韓国の聯合が、そんな韓国民のうっぷんを代弁するかのように配信するニュースには、「日本の気象庁がでたらめな予測で恥をかいた」といった内容の記事が掲載されている。

 警報発令が遅かったことに加えて、実際に津波の高さが、気象庁の発表した予測と大きく違っていたことを問題視したものだった。

鬱陵島近海に白頭山と韓国も他人事ではないのだが…

鬱陵島近海に白頭山と韓国も他人事ではないのだが…

犬も一緒に登山?北朝鮮・白頭山頂上近く

 しかし、韓国もこれを対岸の火事として呑気(のんき)に構えてばかりもいられない。火山活動は世界規模で活性期に入ったと言われている。

 朝鮮半島周辺でも不気味な兆候は見られる。

 たとえば、鬱陵島の近海には、幅300キロ・メートルにもなる巨大なマグマだまりの存在が確認されており、それが今回のトンガ沖の海底火山爆発に何らかの影響を受けて「再び爆発するのでは?」と、不安視する声が上がる。しかし、実は、この声は以前からあった。

 また、それよりもさらに心配なのが、中朝国境にそびえる白頭山。

 この山は、過去1000年ほどの間に30回以上の噴火を記録した火山であり、1000年に1度くらいの割合で大噴火を起こしている。

 過去、高麗時代の西暦900年代中期に起こった大噴火では、火山灰が日本や千島列島にまで到達したという。こちらも、時期的にはそろそろといった頃だ。

 トンガ海底火山爆発による津波の予測では、日本の気象庁も散々な言われようだったが、韓国気象庁が同じ轍(てつ)を踏まないことを祈るばかり。

 もっとも白頭山が大噴火すれば、日本にも甚大な被害が及ぶことは予想される…。

 自然災害は、どこで起きても他人事と笑ってはいられない。肝に銘じておくべきかと。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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