済州島で震度5を記録

済州島で震度5を記録

人口およそ70万人の済州島

 12月14日午後5時19分、韓国気象庁が済州島西南41キロ・メートルの海域でマグニチュード4.9の地震が発生したと発表。

 震源地に近い済州島では、震度5を記録し、窓や食器が割れるなどの被害も出たという。

 震源から遠いソウルでも大きく報道されて、ざわついているようだ。済州島では、地震の前兆と言われる「地震雲」が発生したことも一部で伝えられ、SNSでは「いま地震雲みたいなのが見えるけど、今度はソウルで大地震が起こるのでは?」などと、不穏な噂も絶えないのだとか。

 我々日本人からすれば、この程度の地震は日常茶飯事、そんな騒ぐような話ではない。が、めったに地震のない韓国では、地震に対する人々の耐性がかなり低そうだ。

歴史を見れば朝鮮半島でも大地震が起きる可能性はある

 2016年にも慶州市近郊でマグニチュード5.8の地震が発生し、東海岸の原子力発電所が稼働を停止する騒ぎが起きている。この時も地震慣れしていない韓国民は騒然となった。

 韓国地質資源研究院は、「韓半島には大地震が起きるほどの応用力が蓄積されていない」として、科学的見地から韓国で大地震が起こる可能性がないことを明言。民心を落ち着かせようとした。

 以来、朝鮮半島ではマグニチュード6.5以上の大型地震が起こる可能性はないという定説が、韓国では根強く信じられている。

 しかし、歴史をさかのぼってみると、朝鮮半島でもマグニチュード6.5以上の大地震は、幾度か発生していた

 慶州地震の震源地近い地層には、マグニチュード6.7~7.0の大地震が起きた痕跡が残っている。

 朝鮮半島に現存する最古の歴史書「三国志記」でも、779年3月に慶州で大地震が起きて多くの家屋が倒壊し、100人以上が死亡したと書かれている。

 この他にも朝鮮半島では、16~17世紀にマグニチュード6.5以上の大地震が3回。江原道襄陽郡では、1681年には韓国史上最大となるマグニチュード7.0~7.5の大地震が起きている

2003年以降M5以上の地震が6回

 また、韓国気象庁の記録を調べてみると、1981年に平安北道でマグニチュード5.3の地震が発生してから20年以上、マグニチュード5クラスの地震は起きていなかった。

 ところが、2003年に仁川近郊でマグニチュード5の地震が発生した後には、今回の済州島地震を含めてマグニチュード5以上の地震が6回も発生しているのだ

 よく言われる「地震の活動期に入ったのではないか?」そんなふうにも思う。

韓国の8割の建物が地震に無防備?

 そこで心配になってくるのが、建物の安全である。

 地震大国の日本では、震度6強~7の激震クラスの地震に耐えられるよう建築基準が設定されている。

 東日本大震災で震度6を記録した東京でも、民家が全壊するようなことはなかった。高層ビルや公共インフラなどに関しては、さらに厳しい基準を設けられている。

 韓国でも1988年から6階以上の建物には耐震設計が義務づけられたが、それでも震度5に耐えられるといった程度。日本の基準と比べてかなり甘い。

 また、それよりも以前の建造物はブロックやレンガを積み上げたもろい作りで、それが現在も国内建造物の4割を占めているという。韓国の建物は、その80%が地震に無防備な状態だという報告もある。

 たとえば、2017年に浦項市で震度4の地震が発生しているが、この時も約1000棟以上の建物が損壊して76人が重軽傷を負う惨事となった。

 震度4程度の地震は、日本では年間に幾度も発生する珍しくないレベル。よっぽどの古民家でもなければ、建物が壊れることもないのだが…。

 韓国民の地震への耐性は低いけど、それよりもさらに韓国の建物は、地震に脆弱(ぜいじゃく)なようではある。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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