マスク着用義務撤廃を発表した韓国

マスク着用義務撤廃を発表した韓国

アジアの国々に先んじて脱マスクを発表した韓国

 新型コロナウイルス対策のためにマスク着用義務を課していたが、最近はこの措置を撤廃する国が増えてきた。

 欧米では、人が大勢集まる繁華街で誰もマスクをしておらず、ここ最近で街の眺めが一変した感がある。

 一方、日本では今も街ではマスクをしない人をまず見かけない。

 政府や医師会も「外すのは時期尚早」としてマスク着用を推奨し、状況の変化を望んではない。

 他のアジア諸国も日本と似た感じで着用義務を撤廃せず、東南アジアでは8割以上の高いマスク着用率が保たれているという。ゼロコロナ政策を実施する中国などはさらに厳しい。

 しかし、韓国だけは違った。

 「諸外国の例から、問題ないと判断した」

 と、4月29日に金富謙(キム・ブギョム)前首相が屋外でのマスク着用義務撤廃を発表。言わば、脱マスク宣言だ。

 いまだマスク着用に固執するアジアの国々に先んじて、アフターコロナに向けて大きく舵を切ったのである。

 さて、この措置によって韓国の状況はどう変わったか。欧米のように一気にノーマスク社会になったのだろうか。現状を見てみたい。

現在のソウルの街は?

 5月3日の朝鮮日報日本版には、マスク着用義務撤廃後の街を取材した記事が掲載されていた。

 それによると、ソウルのオフィス街で横断歩道を渡る人々を調査したところ「横断歩道を渡った会社員ら600人のうち、マスクをきちんとしていなかった人は約30人に過ぎなかった」という。

 また、ソウル中心部の清渓川や徳寿宮近辺を歩く人々では、「10人中8~9人以上がマスクをしていた」とのことである。

 着用義務が撤廃されてからもマスクをしている市民たちのコメントには、「周囲の人の目が気になる」「みんなマスクをしているので何となく…」と、同調圧力が理由として語られていた。

 その上、韓国人女性の間では、マスクがファッションアイテムとして定着した感もある。

 デザインや色にも凝った高機能マスクが次々に発売され、K-POPスターが愛用するマスクのブランドなどにも注目が集まる。

 マスクは化粧と同じで、外に出る時にはしていないと恥ずかしい。女性たちには、そんな意識が根付いてしまったようである。

 人々の意識はそう簡単には変わらない。マスク着用義務が撤廃されても、街の風景がコロナウイルス流行以前の状況に戻るのは、まだ先のことになりそうだ。

アジアの先頭を独走する韓国

 しかし、人々の意識とは関係なく、韓国のアフターコロナに向けての動きが止まらない。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権と新政権の引き継ぎ委員会との間では、屋内でのマスク着用義務の撤廃についても、その時期をにらんで意見が交わされているという。

 新聞でもその是非について語られる記事が多く見かけられるが、

 「英国ではすでに1月に屋内・屋外のマスク規制が解除されている」「米国やフランスは地下鉄やバスにマスクなしで乗ることができる」

 と、欧米諸国を例にさらなる規制緩和を求める論調のほうが目立つ。

 マスク慣れした人々の心情に関係なく、その着用規制撤廃に関しては、この先も韓国がアジアの先頭を独走してゆきそうだ。

元々義務ではない日本だが…

 しかし、ここで考えてみれば、日本では、そもそもマスク着用義務そのものがない。あくまで「お願い」であって強制力はなく、どこでマスクを外しても罰金などの処罰は課されない。

 韓国がやろうとしているマスク規制の全面解除は、“すでに日本においては達成されている”ということではないか。

 それでも、日本の街にはノーマスクの人を見つけるのは難しい。

 理由を問えば、周囲の人の目が気になるとか、韓国と似たような答えが返ってくる。隣国だけに国民気質には似たところもあり…か。

 日本政府や医師会がマスクを外すことを推奨するようになっても、韓国と似たような状況になりそうだ。

 現在の韓国の街角の風景に、日本の近未来が見えてきた感あり。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

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