米韓同盟を基軸にした外交・安保政策では評価も

米韓同盟を基軸にした外交・安保政策では評価も

就任から1か月を迎えた尹錫悦大統領 出典 KOREA_The_20th_President_Inauguration_Ceremony_571 / koreanet

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発足してから6月10日で1か月となった。わずか1か月に過ぎないが、韓国メディアはこの間の成績評価に忙しい。

 就任からわずかな11日目で米国バイデン大統領との韓米首脳会談を行い、米韓同盟を経済分野に拡大することで合意したほか、米国主導の新たな経済圏構想「IPEF=インド太平洋経済枠組み」への参加を決めた。

 就任から2日後には、新型コロナウイルス対策を話し合うオンライン方式の首脳会議に参加し、多国間外交にデビュー。6月末にスペインで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも出席を表明するなど、外交・安全保障の分野では期待以上の活躍を見せていると評価されている。

 ただ外交では、米韓同盟強化の一方で、中国やロシアとの関係をどういった方向にもっていくかは未知数であり、日本との関係をどう回復させるかも重要な外交課題だ。

 また、北朝鮮によるミサイル発射は、就任後1か月間で3回(5月12日、25日、6月5日)、計12発に及んでいる。

 韓国軍は、これまで北朝鮮がミサイルを発射しても「未詳の飛翔体」とあいまいな発表をすることが多かった。

 しかし、新政権になってからは、はっきり「弾道ミサイル発射」と発表し、明らかな「挑発」だと非難し、対抗措置として直ちに米軍と一緒に地対地ミサイルを発射したり、両軍の戦闘機による共同訓練を実施するようになったのは、前政権と比べて大きな変化だ。

迅速な補正予算措置で新型コロナでの損失補填を支給

 前政権と比べての大きな変化としては、大統領執務室を青瓦台から龍山(ヨンサン)国防部庁舎に移転したことで、大統領のメディアへの出現率がはるかに増え、日本では当たり前の「ぶら下がり取材」に気軽に応じ、「国民に近いところで国民に寄り添い働く」姿を見せつけていることだ。

 大統領執務室の移転は、多額の費用がかかり保安警備にも問題があることから、当初は批判的な声が多かったが、今はそうした批判も影を潜めている。

 新型コロナウイルスの防疫措置で打撃を受けた小規模事業者の救済策では、小規模事業者の損失補填に必要な62兆ウォン(約6兆5000億円)の補正予算案を就任翌日には閣議決定し、国会に提出。

 29日深夜に国会本会議で可決された翌日午後には、直ちに支給を開始。

 商工業者371万人余りに600万ウォンから最大1千万ウォン、日本円でおよそ64万円から107万円が支給された。

 また、大統領選挙の第2ラウンドと言われた6月1日の統一地方選挙では、与党「国民の力」が野党「共に民主党」に圧勝した。

 こうした点もあって、最近の世論調査では、大統領の職務遂行について肯定的に評価するという答えが50%以上を超え、批判的な評価は30%台にとどまるなど、上々の滑り出しという評価もある。

新政権で「検察共和国」を作るという疑念で批判

 一方で、物価の急騰や貨物トラックの運転手による全国ストライキへの対応など数々の難題も横たわっている。

 尹大統領は先月、国会での施政演説で、年金・労働・教育改革を行っていく考えを示しているが、今後はこれらの改革にいかに迅速に取り組んでいくかも課題となっている。

 そんな尹錫悦政権発足以降、最も激しい批判にさらされているのが人事だ。

 法務部長官に検察総長時代の側近を充てたのをはじめ、統一相や国土交通相も元検事出身。さらに金融監督院、国家情報院といった権力機関の要職にも自身の出身母体である検察出身者を配置した。

 その上、大統領室の秘書官には、検事時代に一緒に仕事をした側近や、自身の配偶者や親族を巡る事件で弁護を担当した元検事などで固めた。

 こうした身内の検事出身者で固めた「偏重人事」は、「検察共和国」を作る試みであり、政局の不安定につながると指摘する声もある。

 しかし、元々は文在寅大統領が「検察改革」と称して検察からほとんどの捜査権を奪うなど弱体化を図ったことに対する意趣返しという面もあり、こうした新政権の検察出身者たちが、前政権の清算にどう取り組むかも目が離せない。

小須田 秀幸(こすだ ひでゆき) 
韓国在住4年目。KBSワールドラジオ日本語放送で日本向けニュースの校閲を担当。日韓の歴史の舞台となった場所を訪れ、韓国の今を紹介するコーナー「ノッポさんの歴史ぶらり旅」をKBS日本語放送のウェブサイトとYouTubeで発表している。

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