人口崩壊のツイートが物議を醸す

人口崩壊のツイートが物議を醸す

テスラのイーロン・マスクCEO 出典 Maurizio Pesce [Public domain], via Wikimedia Commons

 テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は、SNSでの発言がよく物議を醸すことでも知られる人物だ。5月25日にも自身のツイッターで、韓国の少子高齢化問題について、

 「香港とともに世界で最も早いスピードで人口崩壊が進んでいる」

 と、語っている。当事者の韓国からすればショッキングな文言だ。

 マスク氏のツィートは、2020年に世界銀行が発表した国別合計特殊出生率から引き出されたもの。

 これは、その年の年齢別出生率を参考にして、それぞれの国や地域で1人の女性が生涯に産む子供の数を算出したものだ。

出生率0.84で2年連続世界最下位

 韓国の特殊出生率は0.84でランキング最下位の200位。

 女性が生涯に産む子供の数が1人を下回っているといことになる。このままでは、韓国の人口は3世代以内に現在の6%ほどになり、

 「人口のほとんどを60歳以上が占められるようになる」

 と、マスク氏は言う。

 韓国と同じく人口崩壊の危機を言及された香港の特殊出生率は0.87。このほかにも1人以下の国は、プエルトリコ0.90、台湾0.99と4か国がある。

 韓国は、前年度の発表でも最下位の0.9で、この年度に特殊出生率1人以下の国は、韓国が唯一だった。

 ちなみに、日本は1.34の185位だった。韓国や香港に比べればましな感じだが…、これも平均値の2.39には程遠く、かなり低い数字ではある。

 韓国と同様に人口崩壊の危機に瀕している状況には変わりない。

韓国製EVはテスラの脅威になりつつある

韓国製EVはテスラの脅威になりつつある

IONIQ(アイオニック)5 出典 Maurizio Pesce [Public domain], via Wikimedia Commons

 韓国の特殊出生率は2000年代まで日本を上回っていた。

 しかし、2010年代に入ると低下傾向に拍車がかかり、2018年にはついに1人以下の0.98に落ち込んでしまった。

 出生率の低下した原因については、非正規雇用の増加で結婚や子作りが困難になった若者層が増えたことなどが挙げられる。

 これについては、これまでも多くの媒体でも取り上げられているので、いまさら詳しく書く必要もないだろう。

 それよりも気になるのが、そんな“いまさら”な感じのある韓国の出生率低下に「なぜ、マスク氏が関心を示したのか?」 それが少し気になる。

 テスラを追いかける韓国製の電気自動車(EV)の脅威、発言にもその影響があったというのは考え過ぎか。

 現代自動車の「アイオニック5」は、2021年に「カー・オブ・ザ・イヤー」に選出され、米国やヨーロッパで爆売れしている。

 EVの世界において、日本は明らかに韓国に遅れをとっているというのが世界の認識。

 韓国製EVはやがて、テスラの牙城を脅かす存在になると言われている。

日本より韓国重視とも?

 テスラにとって韓国は、お得意様でもある。

 最近は、韓国内でもEVの売上が急激に伸びており、テスラコリアでは、前年度を約50%も上回る1兆842ウォン(約1084億円)の売上高を記録。市場として大いに期待できる。

 また、半導体などテスラの車にも韓国メーカーの製品が多く使われているだけに大切なパートナー…。心配にもなってくる。

 愛憎渦巻くといった感じで、マスク氏の中では、韓国が日本よりもずっと強い存在感を持っているのだろう。と、考えてしまった。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

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