EVを中心とした販売戦略

EVを中心とした販売戦略

日本再参入に合わせて日本での社名を韓国語読みのヒョンデに改めることも発表

 韓国の現代自動車が、2月8日に日本市場へ再参入することを発表した。

 現代は2001年に日本市場に進出したが、実績を上げることができず。2009年にはバスを中心とする商用車販売事業だけを残し、大部分の事業を整理して撤退している。

 「12年ぶりの再参入でリベンジはなるか?」

 当時とは状況が違って、今は脱ガソリン車が世界的なトレンド。

 現代自動車の電気自動車(EV)は、日本の自動車メーカーと比べてはるかに充実しているという。これを中心とした販売戦略で、十分に活路はあると考えているようだ。

 自動車業界にとって日本の市場は、中国や米国に次いで世界で3番目に大きい。

 しかし、EVでは昨年の販売台数はわずか2万1144台、売上の1%にもはるかに満たない。中国の291万台や米国の32万5000台と比べてかなり見劣りがする。

 この数字だけを見れば、確かに入り込む余地は多分にありそうなのだが…。

欧米でのブランド価値はトヨタに勝る!?

 しかし、日本市場は外国メーカーにとっては鬼門。

 過去にもフォードやローバー、オペルなど欧米の有名メーカーが、現代と同様に実績を上げることができずに撤退している。

 日本には、トヨタやホンダなど強力な国内メーカーが存在する。ベンツやBMWといった世界的ブランド価値のある高級車でもない限りは、約95%のシェアを占める国産車の牙城で生き残るのは難しい。

 とはいえ、昔とは違って、現代自動車は世界第5位のシェアを誇り、ブランドイメージもかなり向上してはいるという。

 世界的には「壊れにくい」「乗り心地が良い」と言われ、トヨタやホンダよりも品質が高いと評価する声もある。

 また、高級車の「ジェネシス」は、北米市場で「レクサス」のライバルとされているとか。

 だが、「世界の常識は日本の非常識」とはよく言われること。現代自動車に対する世界的な高評価に日本人が聞く耳を持っているだろうか。

 ベンツやBMWくらいの強固なイメージを形成できなければ、日本市場で外国車が生き残ることは難しい。

過去の悪いイメージが足かせに…

 現代自動車が2001年に日本進出した時には、俳優ペ・ヨンジュンを起用し、大人気だった韓国ドラマと同名の「ソナタ」のCMが毎日のようにテレビで流れた。

 が、この時はイメージの構築に失敗。価格では、日本車と同等なだけにプラスアルファのブランド価値がなければ、信頼実績のない韓国車は誰も見向きはしなかった。

 また、この頃の韓国車には不具合も多かった上に、アフターケアの体制が整っておらずクレームが続出。悪評は今も根強く残っている。

 今回の再進出に際しては、それを意識してか、

 「当時の私たちは、1人ひとりの大切なお客さまに耳を傾けられなかった」

 と、張在勲(チャン・ジェフン)代表取締役が反省の弁を述べている。

 人間、1度できたイメージは、そう簡単に払拭できるものではない。この負の遺産が、再参入のハードルをさらに高くする可能性はある。

約500万円のEVを5月からオンラインで販売

約500万円のEVを5月からオンラインで販売

主力EV「IONIQ5」

 今回の日本進出で主力商品と目されるEV「IONIQ5」は、ドイツでイヤーカーに選ばれた名車。北米市場での売れ行きも堅調なのだという。

 価格は479~589万円、5月からオンラインで注文の受付が開始される予定だ。

 CMにはBTSとか、K-POPアイドルでも起用するか。しかし、彼らのファン層である若い年代が買えるような価格ではない。

 購買力のある年齢層は、韓国車の悪しきイメージが残っている。過去のイメージを一新できるようなアピールはできるのだろうか。そのあたりにも注目してみたい。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

記事に関連のあるキーワード

おすすめの記事

こんな記事も読まれています

コメント・感想

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA