平壌から北京まで800km

平壌から北京まで800km

平壌から800kmに位置する北京・天安門広場

 「北朝鮮からのミサイル、実は、中国へ向けてだと考える朝鮮族もいるんですよ」

 そう語るのは、東京在住10年を超える中国朝鮮族のある男性経営者。

 「私の周りの日本人もそうですが、多くの中国人も日本へ向けたものだと信じて疑う人はいないでしょうね。日本の上空を通過した4日のミサイルなら中国全土は余裕で射程範囲に収まっています」(同)

 4日早朝、日本を大騒ぎさせたミサイルは、飛距離約4600キロ・メートルと推定される。

 平壌から広東省深セン約2142キロ・メートル、チベット自治区のラサ約3323キロ・メートル、新疆ウイグル自治区のウルムチ約3193キロ・メートルという距離だ。

 首都北京なら平壌から約808キロ・メートルとなる。これは、6日午前6時15分頃に800キロ・メートルほど飛行したと推測される2発目のミサイルでちょうど届く距離だ。

 北朝鮮のミサイル発射は今年23回目(巡航ミサイルも含む)。特に9月25日以降は、過去にない高頻度となっている。これに対して、日本政府の“遺憾砲”は、何の抑止力にもなっていない。

肯定的なコメントで埋まる官製投稿

肯定的なコメントで埋まる官製投稿

CCTVの軍事専門アカウントによるウェイボー投稿

 北朝鮮は多くのミサイルを日本海へ打ち込み、方角も日本であることから、日本へ向けてと考えやすい。これは中国人でも同様のようだ。

 4日の5年ぶりに日本上空を通過したミサイル発射は、中国中央テレビ(CCTV)の軍事専門アカウントがSNS微博(ウェイボー)へ投稿し、3万6000を超えるいいねが押されている。

 10月4日、韓国合同参謀本部は、北朝鮮が朝鮮半島東部海域へ向けて正体不明の弾道ミサイルを発射したと発表した。日本放送協会(NHK)によると、松野博一官房長官は、ミサイルが日本上空を通過したと述べた。北朝鮮は、ミサイル発射について、ここしばらく何の声明も出していない。

 確認できる事実のみを短く伝え、論評などは加えていない。中国政府としては、「中国へ向かって発射されたものではないので関係ない」という態度を国内へ示したいのだろう。

 この官製投稿には、2349件のコメントが書き込まれている。

 「何で日本は撃ち落とさないんだ?」「金さん男を上げたね」「自国の安全は自分たちで守る朝鮮を支持する」「国慶節祝い」「3000kmも先に着弾したのに日本人はビビりすぎ」「将軍、南進を!」「すばらしい」などの高評価、肯定的なコメントしか確認できない。否定的なコメントは、検閲対象となりすでに削除されたとみられる。

中国が都合よく加工した情報を世界へ発信

 前出の朝鮮族経営者は、「一連のミサイルも再開が近いと言われる核実験も表向きは米国、米軍基地があり、拉致問題などの懸案事項を抱える日本向けとしたほうが北朝鮮的に都合が良いわけです。これなら『対米向けだから』と言ってしまえば、中国も強くは制止できないでしょう」

 そもそも北朝鮮は、中国に対して根強い不信感を持っており、基本的には、まったく信用していないのが根底にあると話す。

 「北朝鮮は生命線である中朝貿易を中国に牛耳られています。ですが、中国は対外的に“北朝鮮が”『国境封鎖』『拒絶』『新型コロナウイルス流入を警戒』など、中国は北朝鮮のために何とか再開させたいけど、常に北朝鮮がわがまま言って拒否しているように加工した情報を世界へ流しています。北朝鮮が語る口はありませんから、中国に言われたい放題です」(同)

 北朝鮮が異例の頻度で発射するミサイルは、中国に「もっと支援しろ」というアピールなのかもしれない。
 
 北朝鮮のアピールを北京の習近平国家主席らは理解しているはず。ウェイボーなどを使った世論工作からそう感じると朝鮮族男性は推察する。

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