今月7回目のミサイル実験、金正恩体制で過去最多

今月7回目のミサイル実験、金正恩体制で過去最多

1月31日付の労働新聞が掲載した1月30日、北朝鮮の「火星12」発射実験(提供 コリアメディア)

 北朝鮮は、1月30日に発射した中距離弾道ミサイルが、「火星12」型であったと発表した。

 朝鮮労働党機関紙・労働新聞が31日、国防科学院と第2経済委員会が発射実験を行ったと伝えており、すでに実戦配備されているという見方もある。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は発射に立ち会っていないようだ。

 ミサイルの発射実験は、今月7回目。金正恩体制下での発射実験としては、月別で過去最多である。

 北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返している背景には、ウクライナ情勢に集中し、米朝交渉を本格化させないジョー・バイデン米政権をけん制する意図があると考えられる。

 今後、米国の方針次第では、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を再開させる可能性もあり、緊張が高まっている。

 北朝鮮も2月4日から始まる北京五輪の期間中は、中国との関係上、周辺地域の安定を損ねるような行動はとらないかもしれないが、開催前後の動きに注意が必要だ。

2017年に初めて公開された火星12

 今回発射された火星12は、17年4月の金日成(キム・イルソン)生誕105周年記念閲兵式で、初めて公開された中距離弾道ミサイル。

 17年には少なくとも3回、火星12の発射実験を行なっており、大型核弾頭を搭載可能とされている。

 当時も今回と同様、ロフテッド軌道で撃った。

 ロフテッド軌道は、通常より発射角度を高くして、山なりに打ち上げるもので、ミサイルが高高度に達し、落下の速度が非常に速くなることで、迎撃が難しいとされる。

 ちなみに、ロフテッド軌道で発射されたミサイルとしては、19年10月に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「北極星3」型以来となる。

うやむやになった「グアム包囲射撃計画」

 火星12は、通常軌道であれば、射程距離は約4500キロ・メートルとされ、米国のグアムが射程圏内に入る。

 北朝鮮は17年8月、「グアム島周辺の包囲射撃を行う作戦案を検討している」と警告する声明を発表、一気に緊張が高まった。

 北朝鮮が、グアム包囲射撃計画をどの程度本気で検討していたかは不明だが、当時のドナルド・トランプ前大統領は当然のように猛反発。「北朝鮮がこれ以上、米国を脅かすのであれば、世界がかつて見たこともないような炎と激しい怒りに直面するだろう」と警告した。

 米国政府高官らも、グアム周辺にミサイルの1つでも落とせば、米国が軍事力行使に踏み切る可能性があると言及した。

 さすがの北朝鮮も、このままでは米国の「レッドライン」を越えると考えたのか、「もう少し米国の動向を見守る」と表明し、グアム包囲射撃計画については触れなくなった。

 ただ、この年、北朝鮮は、9月に6度目の核実験を実施し、11月には、米国全土を射程に収めるICBM「火星15」の発射実験を成功させ、「核武力完成」を宣言することとなる。

バイデン政権が方針転換しなければICBM実験再開か

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1月30日、「緊張が高まった時期と似た様相である」と言及。

 前述の通り、北朝鮮がいわゆる瀬戸際外交を展開し、火星12などミサイル発射実験を繰り返した2017年と、現在の状況が似ていると指摘した。

 また、今回の火星12発射について、「国連安全保障理事会決議に反する行為だ」と北朝鮮を珍しく非難した上で、北朝鮮の核実験やICBM実験の中止宣言について、「破棄に近づいている」との見解を示した。

 北朝鮮は、2018年に核・ICBM実験の中止宣言を発表して以降、両実験を停止していたが、今年1月19日、中止宣言の破棄を示唆していた。

 背景には、ウクライナ問題など国内外に問題を抱えており、北朝鮮との対話に本腰を入れないバイデン政権に対するいらだちや焦りがあるとみられる。

 バイデン政権にとっても、北朝鮮が核・ICBM実験を強行すれば、トランプ政権で築いた米朝関係が破綻したとして、共和党から対北戦略の失敗を追求されるリスクがある。

 そのため、今回の火星12発射により、バイデン政権も何らかの対応をとる必要性が生じている。

 もし、バイデン政権の米韓合同軍事演習などの対北方針に変わりがない、もしくは、対北制裁強化の方向に進むのであれば、北朝鮮がICBM実験再開に踏み切る可能性は十分ある。

八島 有佑
@yashiima

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