韓国ドラマにベトナム人激怒は本当か?

韓国ドラマにベトナム人激怒は本当か?

ベトナム戦争集結の地として観光地となっている統一会堂(ホーチミン)

 ベトナム政府がネットフリックスに対して、韓国ドラマ「シスターズ」の配信停止を求めた。

 理由は、同ドラマ内でベトナム戦争を歪曲する発言をしていることを理由に挙げている。ネットフリックスは、要求に応じて6日午後にベトナム向けの配信を停止した。

 今回の配信停止は、ベトナム向けのみのため、日本向けなどベトナム以外では、そのまま配信が継続されている。

 ベトナムでネットフリックスを契約している日本人は、日本向けの番組を見るためにVPN(仮想プライベートネットワーク)を通して視聴している人も少なくなく、変わらずシスターズを見ることができるようだ。

 さて、このシスターズ問題を伝えた日本の1部メディアでは、シスターズを見たベトナム人が「とんでも発言」に激怒したと報じている。

 果たして、本当なのかベトナム人に確認してヒントを探ってみた。

韓国に悪いイメージはない

 日本に在住する20代から40代のベトナム人男女へ聞いてみると、今回の騒動は、日本のネットニュースを見て知ったとのことだったが、特にベトナム人コミュニティの中で話題になってはないようだ。

 そこで、ベトナム人の同級生や友人、家族などは、「韓国や韓国人をどう思っているのか?」を尋ねてみると、「(中国と比べて)悪いイメージを持っている人は少ないと思います。10代や20代の若い世代は、K-POPファンが多くむしろ良いイメージを持っている人も多いかと」と話してくれたのは、東京在住10年を超えるホーチミン近郊の都市出身のチェンさん(30代男性)。

 「出身地域によって違いがあると思います。私の出身であるハノイがある北部出身者は、(敵だったこともあり)あまり韓国を良く思っていない人は多いようです。でも、それも年齢が高い人たちに多い印象です。私の世代だと少ないです」(ベトナム北部出身のグエンさん20代女性)

 さらに、ホーチミンや首都ハノイに20年以上住む日本人へ聞いてみると、「職場のベトナム人たちでも特に話題になっていない」とのことだった。

 「韓国のイメージが悪いという話はあまり聞いたことないですね。最近はベトナム人女性が韓国人男性と結婚して訪韓する人が増え、韓国旅行の話題は耳にします」(ホーチミン在住の日本人女性)

14回侵略した中国

 歴史的に現在のベトナム地域は、中国大陸から大規模なものだけで14回侵攻を受けている。

 最後は、中華人民共和国による1979年の中越戦争での侵略だ。いずれもベトナム側が撃退したとされる。

 そんな歴史的な経緯もあり、ベトナムは中国に対する根強い不信感と警戒心が社会全体を覆っている。

 中国とは、同じ社会主義国で政治体制も類似点が多いように思われるが、東南アジアを代表する反中国家と位置づけられる。
 
 ベトナムは、中国への警戒を忘れないように一貫した歴史教育をしている。一貫した教育ができるのは、ベトナム共産党による全体主義的な風潮が強い国という側面も大きい。

 ベトナムは、中国と適切な距離を取るための国策として日本や韓国など資本主義国、西側とされる国々との関係も重視してきた。

 それが日本でベトナムは親日的な国、親近感を持ってくれる国と日本人に思われる要因の1つとなっていると現地在住の日本人は語る。

韓国への現代史突き上げの動きは?

 そんな経緯もあり、ベトナムは、ベトナム戦争で大量の民間人を虐殺したり、ライダイハンと呼ばれる大きな人権問題を起こしたにもかかわらず、いまだに謝罪どころか、否定し続ける韓国との厳しい現代史をあまり教育してこなかったようだ。

 今後、ベトナムがさらに発展し、成熟してく中で、韓国が無視してきたベトナムに対する戦争犯罪を客観的に検証し、適切な教育をしていく時代を迎える日は訪れるのだろうか。
 
 ベトナムには、もっと史実を明らかにするように韓国を突き上げてほしい。それこそが日本にとってもベトナムとの関係強化や両国の国益にもなると思う。
 
 日本としては、その動きを支援するような協力を積極的にしても良いのではないだろうか。

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