WeChat中国人必須アプリ化で監視体制完成

WeChat中国人必須アプリ化で監視体制完成

中国人の日常生活の一部となった便利なWeChat

北朝鮮が熱く注目する中国人生活必須アプリWeChatその2の続き。

 中国の国民的チャットアプリ「WeChat」。WeChatは、ただのチャットアプリではない。中国政府の国内統制へ大いに貢献しているのだ。

 広く国民の動きや言動を監視するためには、国民全員にWeChatを普及させて日常的に使用させる(アクティブユーザー化)必要がある。

 そのために中国政府が行ってきたことは、青少年へ悪影響や国益を守るため、国内産業の保護などを名目にインターネット規制を強化していった。

 「LINE」など外国製のチャットアプリや電子メールを規制したり、負荷をかけて低速にすることで不便にし、相対的にWeChatを便利することでユーザーを集中させてスマートフォンユーザーのほぼ全員が利用する「中国人必須アプリ」となり、これにより中国政府が目標とした環境は完成したと言っていい。

スカイプへの規制開始でWeChatへのシフトが始まる

 今年の春以降では、「マイクロソフト」の「スカイプ」への規制を強化。日中ビジネスに関わる人たちがスカイプから危険だと知りつつWeChatへのシフトが始まっている。

 中国でも銀行から役所まで幅広く使われているマイクロソフトのオペレーションシステム「ウィンドウズ」。その関係が影響してか、「グーグル」やLINE、「WhatsApp」(米)、などを次々と規制対象にして使えなくするもスカイプや同じくマイクロソフトが運営する「ホットメール」などは細々と使うことができていたのだ。

 WeChat上で、当初は警戒して、隠語を使ってみたり、政治的な内容、台湾独立や少数民族弾圧の話を意識して避けるも、人間の慣れとは怖いもので、次第に警戒心が緩み、いつの間にかスカイプなどと同じような内容をやり取りをしてしまうことになる。この慣れこそが、チャット内容を活用したい側の思うツボとなるのだ。

中国政府にとって超万能監視アプリWeChat

 WeChatは、入力するキーワード単位でアラートが立つ。たとえば、天安門事件、劉暁波、小熊維尼(くまのプーさん)などは、検索NGワードだ。

 規制サイトだけではなく、個別のキーワードでも制限をかけて検索しても結果なしと白紙表示される。

 また、特定のアカウントの全履歴を丸ごと抜き取れる(最低でもすべてのユーザー3年分の全履歴がサーバーへ保存されているとの情報もある)。WeChatを運営する「テイセント」は、中国政府から国家の治安や安全保障の上の問題で提供を求められたら全面協力をしなければならないという。

 2017年に中国公安から尋問を受けたある日本人は、公安担当者が、WeChatのチャット履歴に基づきチャットの相手との関係や、やり取りの目的などの説明を求められたと証言していることから、単なる都市伝説とは言い切れない。

 しかし、対象アカウントの全履歴を丸ごと抜き取るのは、おそらく、どのチャットアプリでもできると思われる。決定的に違うのは、それをその国の中央政府が自由自在に行える点だ。

 つまり、WeChatとは、チャット、音声通話、電子マネー、閲覧履歴、やりとしたデータなどすべて監視することができる超万能監視アプリなのだ。


WeChatプロモーション(日本語字幕)
 

人的監視からハード・ソフト・通信混合型監視へ

人的監視からハード・ソフト・通信混合型監視へ

フルカラー動画で個別に追跡撮影できる高性能な中国の監視・防犯カメラ

 かつて文化大革命の時代には、人間による相互監視、密告し合うような、いわば人的監視をしていたが、その後は、電話の盗聴など機械での監視を経て、現代では、ソフトウェアであるWeChatやスマートフォン、パソコン、USBメモリーなどへ組み込まれたバックドア、監視カメラ、ドローンなどソフトウェアとハーウェア、高速通信網を駆使し組み合わせることで強固な監視体制を構築している。

 北朝鮮は、職場や学校、地域住民同士で相互監視をしているとされる。中国の文革時代のように人的管理が中心だったところにスマホが普及することで、通話内容だけではなく、SNSなどを通じた管理もできる時代を迎えようとしている。

 北朝鮮政府は、スマホ普及促進と並行して北朝鮮版WeChatの開発を進めているのではないだろうか。

待たれる北朝鮮版WeChatの誕生

 北朝鮮のインターネット網は外部とは切り離された巨大なイントラネットのようなものなので、ネット上の監視は容易と言える。あとは、WeChatのような集中管理方式で使い倒せるアプリの存在が待たれる。アプリによって、北朝鮮国民の動きや会話内容を人間が監視しなくても半自動的に流れるように知ることができれば、国家体制をさらに盤石にするためにもこれほど心強い仕組みはないであろう。

 2018年春以降、北朝鮮からの中国のソフトウェア企業への視察が増えているのは、北朝鮮版WeChatを誕生させるための動きではなかろうか。いや、もうすでに誕生しているのかもしれない。

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