しかし、対象アカウントの全履歴を丸ごと抜き取るのは、おそらく、どのチャットアプリでもできると思われる。決定的に違うのは、それをその国の中央政府が自由自在に行える点だ。

 つまり、WeChatとは、チャット、音声通話、電子マネー、閲覧履歴、やりとしたデータなどすべて監視することができる超万能監視アプリなのだ。


WeChatプロモーション(日本語字幕)
 

人的監視からハード・ソフト・通信混合型監視へ

人的監視からハード・ソフト・通信混合型監視へ

フルカラー動画で個別に追跡撮影できる高性能な中国の監視・防犯カメラ

 かつて文化大革命の時代には、人間による相互監視、密告し合うような、いわば人的監視をしていたが、その後は、電話の盗聴など機械での監視を経て、現代では、ソフトウェアであるWeChatやスマートフォン、パソコン、USBメモリーなどへ組み込まれたバックドア、監視カメラ、ドローンなどソフトウェアとハーウェア、高速通信網を駆使し組み合わせることで強固な監視体制を構築している。

 北朝鮮は、職場や学校、地域住民同士で相互監視をしているとされる。中国の文革時代のように人的管理が中心だったところにスマホが普及することで、通話内容だけではなく、SNSなどを通じた管理もできる時代を迎えようとしている。

 北朝鮮政府は、スマホ普及促進と並行して北朝鮮版WeChatの開発を進めているのではないだろうか。

待たれる北朝鮮版WeChatの誕生

 北朝鮮のインターネット網は外部とは切り離された巨大なイントラネットのようなものなので、ネット上の監視は容易と言える。あとは、WeChatのような集中管理方式で使い倒せるアプリの存在が待たれる。アプリによって、北朝鮮国民の動きや会話内容を人間が監視しなくても半自動的に流れるように知ることができれば、国家体制をさらに盤石にするためにもこれほど心強い仕組みはないであろう。

 2018年春以降、北朝鮮からの中国のソフトウェア企業への視察が増えているのは、北朝鮮版WeChatを誕生させるための動きではなかろうか。いや、もうすでに誕生しているのかもしれない。

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