北朝鮮と国交を持つタイ。バンコクには北朝鮮大使館があるも平壌にタイ大使館はない

北朝鮮と国交を持つタイ。バンコクには北朝鮮大使館があるも平壌にタイ大使館はない

木蘭レストラン(パタヤ)の女性スタッフは私服?韓国企業を狙った立地のため韓国人客が9割を占める

 韓国と北朝鮮の関係は知っているようで知らないことも多い。タイと隣国ラオスは似たような言語と文化を有するが、国の発展の度合いはまったく違う。そのあたりに韓国と北朝鮮の関係性に似たようなものがありそうだが、タイに暮らす、元北朝鮮籍の帰化韓国人に話を聞くと、タイとラオスの関係ほど親密でもないようだ。むしろ、日本人と北朝鮮人と同じくらい、韓国人にとっても北朝鮮は遠い存在のようであった。

 タイは北朝鮮と国交がある。1975年に国交が樹立され、2015年には40周年を記念した切手もタイ北朝鮮で販売された。しかし、バンコクに北朝鮮大使館はあるもののタイ大使館は北朝鮮にはない。中国北京のタイ大使館が北朝鮮との関係を維持する役目を担っている。

 北朝鮮国内に大使館を置かない国は珍しい話ではない。北朝鮮は162か国と国交(2017年2月時点)があるが、北朝鮮に大使館を置くのは24か国しかないという。むしろ大使館を置いている方が希有なのである。

日本人より多くタイを訪れる韓国人。ビザなしで90日間滞在できる

 タイと北朝鮮は国交があるため、入国にはビザがいるものの少なからずの北朝鮮人がバンコクに滞在している。一方、韓国人のタイへの入国者数は非常に多く、日本人の入国者数を上回っている。日本人が160万人レベル(2018年の実績)に対し、韓国人はおよそ180万人におよぶ。

 国籍別では中国とマレーシアに次ぐ第3位になっている(日本は第5位)。これは近年、韓国の家電や車などがタイでは人気であり、製造拠点もあるので、日本人同様に訪タイ者が増えているからだ。また、観光でも人気のようで、韓国人にとってタイは訪問しやすい国の1つでもある。

 日本人はビザなしで30日間の滞在が許され、観光ビザを取得してもベースは60日間しか滞在できないところ、韓国人はビザなしで90日間滞在することも大きな要因だろう。

そもそも交流がないほど見かけない存在

 そんな韓国人が多いタイで、その韓国人たちは北朝鮮人と交流があるのか。元北朝鮮籍の韓国人に尋ねた。

 「確かに北朝鮮人もバンコクなどにいるのですが、まず知り合うことはないですね。北朝鮮の人は基本的には政府関係者なので、大使館に関係した仕事をしていますからどこでなにをしているか話にも聞きません。唯一北朝鮮人と顔を合わせることがあるとしたら北朝鮮レストランですね」

 バンコクだけでなく、世界中に北朝鮮政府が直営しているというレストランがある。日本人にもファンがいて、「北レス」などと呼んで足を運ぶ。こういったレストランには”喜び組”と呼ばれる女性たちがウェイトレスとして働くだけでなくダンスや楽器演奏を披露するなど、エンターテインメント性もある。

国連制裁でバンコクの北朝鮮レストランも相次ぎ閉店

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白い麺の盛岡冷麺に対して黒い麺が特徴の平壌冷麺。具の盛り方もきれい

 こういったレストランに来る韓国人男性は、特に高齢になるほど、昔の古きよき朝鮮人女性の姿をそこに見るという。一方では、北レスで働く人々は政府関係者なので、韓国人から様々な情報収集を行っており、韓国企業の中には従業員が北レスに行くことを許容しない場合もあるという。

 しかし、この北レスも最近はどこも閉鎖が続いている。タイも例外ではなく、女性たちへの労働ビザも発給されず、数店舗あった店もどんどんと閉店している。外交関係でもタイ政府は北朝鮮との関係を縮小しつつあるとされ、その影響なのか、北レスはすっかりバンコクでも噂を聞かなくなった。

 これによって、元々繋がりの細かった韓国人と北朝鮮人の南北交流は、ますますなくなってしまったようだ。

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレスなど。
@NatureNENEAM

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