一転して軍事パレードを大きく取り上げる
一転して軍事パレードを大きく取り上げる
北朝鮮が党大会後の14日に実施した軍事パレードについて中国国営メディアが大きく報じている。
前日までの党大会についての扱いは小さく、SNS「微博(ウェイボー)」上には韓国やシンガポールなど外国メディアが党大会についての記事発信が確認できる程度だった。
ところが、軍事パレードについては前日までのほぼ無関心から打って変わり「中国中央テレビ(CCTV)」を中心に地方新聞や人民解放軍関連の公式アカウントも発信している。
CCTVの国際ニュースを伝える4チャンネル(CCTV4)単体のアカウントが多く伝えている。軍事パレードで披露された兵器や行進した兵士、軍用機による飛行演出などの写真を複数掲載したり、1、2分のダイジェスト動画を交え紹介している。
奇妙な報じ方をする中国政府の意図は?
奇妙な報じ方をする中国政府の意図は?
発信記事を見ると、「北極星5」というキーワードを繰り返し登場させて強調していることが分かる。
これは今回の軍事パレードで披露された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の北極星5型とみられ、前回の昨年10月10日の軍事パレードで北極星4型が披露されてから3か月で新型SLBMを登場させたことを伝えているのだ。
5日から開催された5年ぶりの第8回党大会はあまり報じず、大々的に報じた軍事パレードと比較すると奇妙さは否めない。中国政府の意図は何か。
金正恩総書記への不満なのか、朝鮮労働党による1党独裁への疑念が中国共産党への批判へ転じることを警戒してなのか、中朝関係の政治的な冷え込みなのか各専門家の見立ても分かれているようだ。
一般的に考えられるのは、中国政府は中国共産党や習近平体制への批判となることを強く警戒しつつ、既存メディアだけでなく、SNSなどデジタル検閲も日々強化している。
“正しくないコメント”は不要
“正しくないコメント”は不要
CCTVの軍事パレード投稿を見ると、兵器や朝鮮人民軍に焦点が当てられて金正恩総書記の写真や動静を伝える内容が少ない。このあたりに中国政府の意図が隠れていそうだ。
朝鮮人民軍を大きく取り上げるのは、中国政府が昨年、反米利用のために盛んに取り上げた「抗美援朝精神」や「中国人民志願兵」に関係がありそうだ。実質的な朝鮮戦争参戦日である10月25日へ向けてSNSやCCTVを総動員して愛国心を鼓舞した朝鮮戦争での中朝共闘アピールの延長線上にありそうだ。
軍事パレードは多く伝えて内政利用したい。しかし、中国政府が考える“正しくないコメント”は不要とばかりにウェイボーではコメント欄がグレーアウトしている投稿もある。