「党中央委員会事業総括報告」の全文公開

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党大会5日目を伝える1月10日付『労働新聞』(提供「コリアメディア」)

 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は1月10日、党大会5日目となった9日の大会を写真入りで報じた。

 同紙によると、党規約の序文に「強力な国防力で根源的な軍事的脅威を制圧し、朝鮮半島の安定と平和的環境を守る」と明記するなど規約改正が行われたとのことである。

 また、労働新聞は9日に、金正恩委員長が5日から7日にかけて演説した「党中央委員会事業総括報告」の内容を掲載している。

 総括報告が発表されたことで今回の党大会の骨子が見えてきた。そこで、総括報告の要旨を各分野別に見ていきたい(以下は、労働新聞の内容を筆者が日本語に訳したもの)。

核・ミサイルは自衛手段。新型兵器を含む8種類の兵器に言及

 今回の党大会の注目点の1つは、北朝鮮の「非核化の意思」に変化があるかどうかである。

 総括報告の中で、金正恩委員長は、核やミサイルについて次の通り言及している。

 「(2017年の核武力完成について)既存の常識では20年、30年がかかっても成し遂げられない国家核戦力建設大業の完成を、経済建設と核戦力建設の並進路線が提示されたとき(2013年)から4年目に、さらに第7回党大会が行われたとき(2016年)から1年目に実現したのは歴史に類を見ない奇跡である」

 「帝国主義者が地球上に存在し、敵対勢力による侵略戦争の危険が続く限り、革命軍の歴史的使命は決して変わらず、国家の防衛能力は新しいものに沿って着実に強化されなければならない」

「自らを守り、永遠に戦争を知らない真の平和の時代を切り開くために、最強の戦争抑止力を蓄え、着実に強化してきた」

「1万5000キロメートル射程内の任意の戦略的対象を的確に打撃、消滅する命中率をさらに高めて、核先制と報復打撃能力を高度化することに関する目標提示された」(射程1万5000キロメートルであれば、米国全土を射程圏内に収めることになる)

「朝鮮は責任ある核兵器国として、敵対勢力が朝鮮に対して核を使用しようとしない限り、核兵器を使用しないことを再確認した」

 これらの主張は従来の主張通り、「北朝鮮の核保有は、米国など敵対勢力からの脅威から身を守るための自衛措置」という基本スタンスに変化がないことを示している。

 非核化の意思については明言がなかったが、これも「米国の出方次第」という方針とみていいだろう。

 その他の新型兵器について、「長距離弾道ミサイルの精度向上」(射程1万5000キロメートル)、「多弾頭個別誘導技術」(ICBM用の多弾頭方式)、「極超音速滑空弾頭」、「新型原子力潜水艦」(水中発射弾道ミサイル搭載)、「固体燃料式長距離弾道ミサイル」(地上および水中発射可)、「多様な電子兵器」、「無人攻撃兵器」、「偵察探知手段」、「軍事偵察衛星」の開発についても言及した。

「韓国」2018年より前に戻ったとしつつ南北対話の余地を残す

 金正恩委員長は、昨年の「対北批判ビラ散布問題」などを契機に関係が悪化している南北関係についても、詳細に報告している。

 「現在の北南関係は板門店宣言(2018年)が発表される前の時代に戻され、国の統一への夢はさらに遠ざかっていると言っても過言ではない」

 「(韓国は)先端軍事装備搬入と米国との合同軍事演習を中止しなければならないという私たちの度重なる警告を続けて無視している」

 「現在、南朝鮮当局は、疫病人道協力や観光などの不必要な問題を提起することにより、北南関係の改善に関心を抱いているという印象を与えている」

 「南朝鮮では、依然、朝鮮半島情勢を悪化させる軍事的敵対行為と反共和国謀略騒動が続いており、これによって北南関係改善の見通しは不透明である」

 「北南関係の基本的な問題を解決し、相手に敵対する行為をすべて止め、南北宣言を慎重に扱い、誠実に実行するという立場と姿勢をとる必要がある」

 基本的には「南北対話の停滞は韓国側に責任がある」という従来通りの主張である。ただ、韓国側の姿勢を非難しながらも、南北対話の余地を残したことは重要なポイントとなる。

「アメリカ」主敵と位置づけ従来通りの主張であるも米側の政策変更を求める

 注目の新バイデン政権誕生を控える米国に関しても言及がなされた。

 「北朝鮮と米国の力学関係に劇的な変化をもたらし、それによって私たちの国家の尊厳と威信を素晴らしく示した」

 「敵対的な朝米関係史上、初めて開かれた両国の最高首脳の直接会談で、新しい朝米関係樹立を確約する共同宣言を成し遂げた」

 「北朝鮮と米国の新しい関係を確立するための鍵は米国にある」

 「私たちの革命発展の基本的な障害であり、最大の主敵である米国を制圧して屈服させ、鎮圧することに外交活動の焦点を置くべきである」

 「米国で政権を握るものが誰であっても、米国という実体と対朝鮮政策の本心は変わらない」

 と金正恩委員長は述べている。

 昨年11月の米大統領選挙でバイデン新大統領の誕生が決定的になって以来、初めて公式に新政権に言及した形となった。

 米国を「主敵」とはしているものの、これを持って「米国との対話意思なし」と解釈することはできないし、米国に対する「対決姿勢」とも言えないだろう。むしろ、対話姿勢は保持しつつも従来の主張通り、「米国が対北敵視政策を止めない限り米朝交渉は進まない」という態度を改めて示したものと考えられる。

「中国・ロシア」自主権を尊重するその他の国も含め全面的な拡大・発展路線

 上記の韓国や米国以外については、

 「対外関係を全面的に拡大発展させるためのわが党の総体的方向と政策的立場を明らかにした」

 「私たちの自主権を尊重する世界のすべての国との友情と団結を強化し、真の国際正義を実現する」

 「新しい時代に必要な中国との友好関係を発展させ、社会主義を中核とする朝鮮と中国の友好関係に新しい章を開くために、長年にわたる特別な朝鮮と中国の関係の発展を優先する」

 「ロシアとの友好協力関係の発展のための外部活動を通じて、朝鮮とロシアの友好関係を拡大するための礎を準備した」

 金正恩委員長は、基本的な外交スタンスは「全面的な拡大・発展」と定義している。

 中国とロシアとの友好関係はこれまで通り重視するのはもちろんのこと、加えて北朝鮮の自主権を尊重する国に対しては門戸を開くとした。
 

総括報告の中心は経済分野。今後、採択された決定書も公表

総括報告の中心は経済分野。今後、採択された決定書も公表

地下鉄凱旋門駅ホームで9日付労働新聞電子版を読む利用者ら(提供「コリアメディア」)

 最後に、総括報告の中心となった経済分野の報告内容を見ていきたい。

 「経済建設分野は期待された戦略的目標に到達しなかったが、自力で経済発展を持続させるための貴重な基盤がもたらされた」

 「国民を社会主義文明に導くための重要な政治活動として建設工事を重視し、当期の建設工事を精力的に加速することで国の姿を根本的に変えた」

 「自立経済の2本の柱である金属工業と化学工業部門で自主化、自立化の実現のための突破口が開かれた」

 「保健医療部門の物質的、技術的土台が一層強固になり、世界的な大流行伝染病(新型コロナ)を防ぐための先制的かつ強力な非常防疫活動を通じて、衛生防疫部門に整然とした活動体系と土台が確立した」

 「私たちの人々により文明的な生活を提供し、私たちの国の変化し続ける姿を世界に示すための重要な仕事として、観光の活性化を示唆した。観光地を整え、宣伝方法を改善し、観光コースなどを多様な方法で組織化する必要がある」

 「新しい5か年計画期間中に建設現場が直面する基本的な課題は、住居の建設を含む資本建設を大規模に実施し、人民により高度で文明化された生活様式を提供し、国の外観を根本的に変えることである」

などと報告している。

 国連制裁などを理由にしつつも「5か年経済計画」の未達成を認めたことは注目すべき点である。

 今後の課題についても触れられ、詳細は不明ではあるが「新5か年経済計画」についても言及されている。

 党大会自体は6日目(10日)に入っているとみられ、党大会で採択された決定書の内容も今後、公表される見通しである

八島 有佑

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