90年代前半には待ち時間に駅を出て新義州観光ができた?

 北朝鮮の新義州青年駅は、他にも些細な変化が確認できる。非常に細かな変化かもしれないが、この10年、利用できたという話を聞いたことがない駅舎の地下トイレも昨年9月以降は利用できるようになったようだ(下車できた場合)。

 ここ10数年は、なにかと規制が多い新義州駅での停車中の待ち時間であるが、90年代前半に国際列車を利用した日本人研究者によれば、当時は、下車はもちろん、駅舎の外へ出て近場を探索できたという。もし、今後、また駅の外へ行くことが解禁され、1時間くらいでも駅前プチ観光でも実現すれば、新義州へ少しでも外貨が落ちると思うのだが、再開する日は果たして訪れるのであろうか。

 新義州を観光したいという日本人の声は多い。しかし、新義州は、中朝交易最大の都市として北朝鮮にとって重要都市に位置づけられている。北朝鮮最大とされる入管関連施設、今回の新型コロナウイルス感染対策として入国者を隔離できるような大型施設もあり、2014年末からのエボラ出血熱対策のときにも利用されたことが報じられている。

新鴨緑江大橋を開通させて外貨を稼ぐ新義州カジノタウン構想

新鴨緑江大橋を開通させて外貨を稼ぐ新義州カジノタウン構想

新義州駅出発した直後に見える丹東新区

 現在、新型コロナウイルス禍で進展状況は明らかになっていないが、新義州をマカオのようなカジノタウンにしようという「新義州カジノタウン構想」が進行している。カジノを中心とした総合型リゾート(IR)として、併設されるホテルなどの建築が進んでいるとされる。IR開業に合わせて、現在、開通が無期限延期となっている「新鴨緑江大橋」も中国側の全面支援で開通させることで中国人富裕層をターゲットに日帰りカジノツアーを実現させたいと計画されているものだ。

 新鴨緑江大橋は、大連と丹東を結ぶ高速道路「丹大高速道路」と連結しているため、高速道路からそのまま新橋を渡って北朝鮮へマイカーで乗り入れることができる。

2020年も日本人向け日帰り新義州ツアー解禁は厳しいか

 北朝鮮経済にとっては、新義州を中国人以外の観光客へ解禁させて外貨を稼ぐよりもカジノタウンでカジノ好きの中国人富裕層から多額の外貨を稼ぐほうが何十倍も旨味は大きいだろう。

 新義州の観光規制がなかなか緩和しない背景には、朝鮮人民軍の軍事的な重要拠点であることや国連制裁との兼ね合いでグレーな中国人向けカジノタウン構想があるため、あまり中国人以外の外国人を受け入れたくないという北朝鮮側の思惑もありそうだ。そのため、一部では熱望されていて、解禁されるも数週間で停止を繰り返している日本人向けの新義州日帰りツアーや1泊2日での最短訪朝などの手軽な北朝鮮旅行は今年も進まないかもしれない。

20170908中天新聞 通北韓新鴨綠江大橋 通車遙遙無期
 
 2017年9月3日の北朝鮮による水爆実験と称する核実験後の丹東を伝える台湾メディアのニュース(日本語字幕なし)。当時は、金正恩委員長が外交を活発化させる半年前で、中朝関係悪化が報じられて、丹東は中朝交易へ規制が入り、新鴨緑江大橋は完成するも開通は無期限延期、新橋周辺の高層マンションはゴーストタウン化していると現地から伝えている。

 中国では北朝鮮を朝鮮と表現するが、台湾は、北韓と表現する。

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