合意では、北朝鮮側が拉致被害者と特定失踪者の再調査を約束し、日本側はその見返りとして制裁解除を行うことで合意され、日朝問題の解決及び日朝関係の改善が期待された。

 だが、その後、再調査結果の報告はなく、北朝鮮側は再調査委員会を解散させている。

 この点、日本側は北朝鮮側がストックホルム合意に背いたとしているが、北朝鮮の宋日昊日朝国交正常化担当大使は2017年4月に「(ストックホルム合意は)日本側が一方的に反故にした」と述べるなど、日朝両国で見解に隔たりがある。

 それ以降、日朝間に大きな進展はなく今日にいたっている。

 今年5月以降、北朝鮮国営メディアは、拉致問題を「解決済み」であるという立場を改めて明確にし、圧力政策を続ける日本を批判する論評を相次いで掲載しているが、これは「米朝首脳会談など他国との対話を日本に邪魔されないように」という意図のものであるとみられ、日本との対話を閉ざすことは言明されていない。

 少なくとも北朝鮮には、日朝交渉を拒むメリットはないと考えられる。
 

今後の日朝関係の展望。周辺国の対北朝鮮圧力が弱まりつつある中で方針転換も

 今後の日朝交渉については、米国など他国の動向を考慮した上で、長期的な視点が必要だと考えられる。

 米朝関係改善により朝鮮半島の緊張は少なくとも一時的には解消されているが、北朝鮮の「非核化」には年単位の時間が必要となる。

 その間、米国や韓国、中国、ロシアといったプレイヤーが、北朝鮮との間で独自もしくは他国と協同して交渉を進めることになる。

 日本がこれまで行ってきた北朝鮮への「圧力」政策は外交戦略の1つではあったかもしれないが、米朝共同声明により米国からの「圧力」が弱まり、中国や韓国が北朝鮮との経済協力に前向きである中、日本政府だけで「圧力」を加え続けることの有効性は減少しているという見方もできる。

 ではどうすればよいか。

 現在の国際情勢の中、日本だけが北朝鮮との「対話」を拒むことは現実的ではないかもしれない。

 日本政府としても、日朝間の最大の懸案事項である拉致問題解決のために、日朝交渉を独自に進めていく必要があるだろう。

 ただ、それは安倍首相が決意しているとおり、日朝交渉は「北朝鮮の核・ミサイルや、そしてもっとも重要な拉致問題の解決に資するもの」でなければならないことは間違いない。

 今回トランプ大統領が米朝首脳会談で、「米朝和平」に向けたビジョンだけを共同声明で示し、「非核化」への詳細事項は今後、実務者協議で決めていくこととしたことには批判も多いが、「朝鮮半島の非核化」に向けて米朝がともにスタートを切ったことは悪いことばかりでもない。

久原嶺白(Hisahara Mineaki)

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