しかし、バイデン側は態度を改めることはしなかった。2019年11月には、バイデン陣営が米大統領選に向けて出したキャンペーン広告において、2018年米朝会談での金正恩委員長の写真を「暴君」というナレーションで紹介したのである。

 当然、朝鮮中央放送(11月14日)はこれに反応。バイデン氏を「狂犬」と称し、その言動を批判する論評を掲載したのである。その内容は、「バイデンのような狂犬を生かしておけば、より多くの人々が被害を受ける。手遅れになる前に棒で殴り殺さねばならない」などと猛批判するもので、近年でも例を見ないほどの言葉でバイデン氏を攻撃した。

 だが、このような批判も意に介していないのか、バイデン氏は11月15日、「殺人的な独裁者の金正恩は私のことを好きではないようだ」とした上で、「彼らからの罵倒は名誉の勲章」であると言い返している。

 また、トランプ大統領が以前に「金正恩委員長と恋に落ちた」と述べたことを引き合いに出し、「バイデン政権にラブレターはないだろう」と言明した。トランプ大統領のようなスタンス、つまり「宥和的な態度」で北朝鮮と対話するつもりはないということを示したのである。
 

最悪の米朝関係だったトランプ政権初期

 ではバイデン政権は北朝鮮に対して強硬姿勢を貫くのだろうか。

 振り返ってみると、今でこそトランプ大統領と金正恩委員長は良好な関係を構築しているが、2017年12月ごろまでは北朝鮮側はトランプ大統領を「老いぼれ」と称し、トランプ大統領は金正恩委員長を「ロケットマン」と呼ぶなど、非難の応酬が続いていた。このことを考えると、現在のバイデン氏の対北姿勢が大統領就任後も続くとは限らない。

 また、バイデン氏が副大統領を務めていたころ(2009年1月〜2017年1月オバマ政権)とは異なり、今では北朝鮮は核を保有し、米国全土を射程におさめるICBMを保有するなど、軍事能力は飛躍的に高くなっている。そのため、強硬策一辺倒で進めるわけにもいかないし、対話の道筋を模索する可能性がある。

 実際、バイデン氏は10月23日の討論会で、米朝対話について、「北朝鮮が核戦力の削減に応じることが条件。朝鮮半島は非核化地域となるべきだ」と述べている。条件つきではあるが交渉への道は閉ざしていないのだ。

 ただ、トランプ大統領は金正恩委員長との個人的な関係をもとに「トップダウン方式」で米朝交渉を進めてきたが、バイデン氏はこれを「何ら成果なく、北朝鮮に正統性だけを付与した」と批判的な立場で評価している。

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