権力への自信か?単なる代理か?

権力への自信か?単なる代理か?

金正恩総書記の左隣に座る趙甬元氏。2021年2月11日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

 「公式代理人」を置いた意図について北朝鮮は明らかにしていない。韓国の北朝鮮専門家の多くは、「自分の代理人を置いても、大丈夫なほど権力に自信を持っている証拠」(パク・ウォンゴン梨花女子大北韓学科教授)としている。北朝鮮の最高権力者となって10年が経ち、「権力を確立した証し」という見方だ。

 また、公式代理人とあったにしても、総書記の絶対権力は変わっておらず、権限は限定的との指摘もある。「総書記の指示を受けて書記、党員をつなぐ役割に留まる」(梁茂進(ヤン・ムジン)北韓大学院大学教授)と分析だ。

有事への備えか?

 北朝鮮はコロナ禍で中朝国境を閉鎖し、すでに1年半近くが過ぎている。物価の高騰、食料不足も伝えられ、平壌駐在の外交官はほとんどが北朝鮮を出て、帰国してしまった。

 新型コロナウイルスのワクチンは、国際的なワクチン供給の枠組みから配給を受けることは決まったものの、接種状況のモニタリングをめぐって対立し、実際の接種は始まっていない。

 こういった厳しい状況を踏まえ、李鍾奭(イ・ジョンソク)元統一相は、統一省担当記者たちに対して、「何か緊急事態に備える意味があるのではないか。後継者にすることも意識しており、妹の与正がこの職に就くだろう」と説明した。私も、この「有事への備え」説を支持している。

 いずれにせよ、どの説が当たっているのか、今後徐々にわかってくるに違いない。

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、近著『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)など。

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