聯合ニュースが第1書記新設を伝える

聯合ニュースが第1書記新設を伝える

2021年2月の党中央委員会総会に出席した趙甬元氏。2021年2月11日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

 韓国・聯合ニュースは6月1日、「朝鮮労働党が金正恩(キム・ジョンウン)総書記に次ぐポストとして『第1書記』のポストを新設した」と報道した。

 同メディアは、「北朝鮮は1月に朝鮮労働党の第8回党大会で党規約を改正し、『党中央委員会全員会議は(中略)第1書記、書記を選挙する』との内容を追加した」とする北朝鮮消息筋の情報を伝え、同ポストに趙甬元(チョ・ヨンウォン)党政治局常務委員が就任した可能性が高いと報じている。

 北朝鮮ではこれまでも複数の人物をナンバー2とする憶測が飛び交っていたが、正式にナンバー2のポストが設置されたとなれば、きわめて異例である。金正恩氏は2012年4月から2016年5月まで第1書記の地位にあったが、このときの第1書記は総書記に代わる党の最高地位として新たに設置されたものであった。

 ただし北朝鮮の公式メディアは現在までに第1書記の存在を明らかにしておらず、党大会後に第1書記の肩書きを持つ人物も報道では出てきていない。ポストが空白の可能性もあり、真偽は不明であることに留意したい。

事実上の執行機関の役割を持つ書記局

事実上の執行機関の役割を持つ書記局

朝鮮労働党の機構図

 今回話題になっている総書記や書記とは、党中央委員会内の書記局のポストである。

 2016年に「書記制」を「委員長制」に変更していたが、今年1月の第8回朝鮮労働党大会で元に戻しており、金日成(キム・イルソン)主席、金正日(キム・ジョンイル)総書記と同じく金正恩氏が総書記ポストに就いていた。

 書記局は事実上の執行機関とされる。書記局のトップは総書記の金正恩氏で、その下に書記が9人。今回報道された趙甬元氏のほか、最高人民会議議長の朴泰成(パク・テソン)氏、党中央軍事委員会副委員長の李炳哲(リ・ビョンチョル)氏らが名を連ねる。

党最高指導部とされる常務委員も務める趙甬元氏

 さて、ナンバー2の真偽はともかく趙甬元氏が重用されているのは確かである。趙甬元氏は書記だけでなく政治局常務委員会で常務委員も務める。

 書記局と同じく党中央委員会内にある政治局は「党中央委員会の権限を代行してすべての党事業を決定・指導」する役割を持っており、さらにその内部にあるのが常務委員会だ。常務委員会は政治局内にあるが事実上の上位機関で「党最高指導部」とされる。

 趙甬元氏はこの政治局常務委員会と書記局両方に籍を置いている。ちなみに両者を兼任しているのは他に李炳哲(リ・ビョンチョル)氏がいる。このほか趙甬元氏は「軍事分野の最高政策決定機関」である党中央軍事委員会でも委員を務めるなど、党内で重要な地位に就いているのだ。

第8回党大会で常務委員に抜擢

第8回党大会で常務委員に抜擢

起立する金頭日氏に対して発言する趙甬元氏(右側)。2021年2月11日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

 趙甬元氏が北朝鮮の報道で露出が増えたのは金正恩政権になってからである。詳細な出生などは明らかにされていないが、2017年6月の対北制裁決議(国連安保理決議2356号)で趙甬元氏が制裁対象に指定された際には、国連側は生年月日を1957年10月24日と公表している。

 趙甬元氏は2012年に党組織指導部第1副部長に就任しており、2016年5月の党中央委員会第7期第1回総会で党中央委員会委員に選出。今年1月の第8回党大会で最高指導部である政治局常務委員に大抜擢された。

 その後、開催された党中央委員会総会(2月8日~11日)では、金正恩氏の面前で金頭日(キム・ドゥイル)書記兼経済部長に対して批判しているかのように見える趙甬元氏の写真が労働新聞(2月11日付)に掲載された。金頭日氏はその後、役職を解任されている。

2017年以降随行回数が増えた趙甬元氏

 そして2017年以降は金正恩氏の現地視察に随行者として北朝鮮メディアに名前が出る機会が多くなった。2019年は随行回数1位、2020年は朝鮮人民軍総参謀長である朴正天(パク・チョンチョン)氏に次いで2位であった(筆者把握分)。2018年3月に金正恩氏が訪中した際にも同行するなど、重要な局面でたびたび名前が出ている。

 また、金正恩氏が今年4月15日に太陽節(故金日成主席生誕記念日)に錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した際に同行者が5人だけであったことが話題になったが、趙甬元氏はその同行者の1人であった。このときの他の同行者は、李雪主(リ・ソルチュ)夫人、金与正(キム・ヨジョン)氏、朴正天氏、玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏で、趙甬元氏が特別な立場にあることが示唆されていた。

 このような役割や実績を考えると、趙甬元氏が金正恩氏の最側近の1人であるのは間違いない。ナンバー2ポスト報道の真偽については、北朝鮮側の発表を待つしかないが、今後も趙甬元氏が党内で重要な役割を担うのは確かである。

八島 有佑

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