蘇岩礁(中国)・離於島(韓国)

蘇岩礁(中国)・離於島(韓国)

仁川国際空港がある永宗島から臨む黄海

 韓国が抱える領土問題は竹島だけではない。日本ではあまり知られていないのだが、中国との間にもお互いが領有権を主張している島が存在する。その島は、東シナ海への出口に近い黄海の真ん中にあり、中国名は蘇岩礁、韓国では離於島とか波浪島などと呼んでいる。

 蘇岩礁は干潮時も水面下に没しており、島というよりは浅瀬といったほうが正しい。国際海洋法でも「島」とは、高潮時においても水面上にあるものと規定している。そのため、領土としては認められない。が、蘇岩礁のある場所は、ちょうど両国の中間線近くにあり、どちらもその周辺海域を自国の排他的経済水域であると主張している。つまり、蘇岩礁は「自国の排他的水域内にある水中岩礁」ということになる。

2000年代までの韓国は強気だったが…

 自国の排他的経済水域にある浅瀬ならば、どんな風に利用しても他国から文句を言われる筋合いはない。1987年には韓国がここに灯台を設置し、90年代には海洋調査も実施した。当然、中国の抗議は想定内。だが、中国の国力は今ほど強くはなく、海軍力や空軍力も脆弱だった。だから韓国もやりたい放題にできる。2000年代初頭までは「明らかに韓国の領土」という主張を崩さず、海洋調査基地として人工島を建設するなどしながら、領土としての既成事実を積み上げていった。

 しかし、この後は中国の軍事力が急速に拡大し、韓国経済も中国への依存度が高まってゆく。そうなると強気な態度は影を潜めて、2013年にはついに「領土ではない」と認めてしまった。中国の重圧に屈したのである。

 現在は、蘇岩礁を含む周辺海域は中韓両国の暫定水域として、両国が共同管理するということで、とりあえずは落ち着いているようだ。

実は中国が狙う国境の島がもう1つ

 朝鮮半島の西側、北朝鮮との国境近くの黄海に浮かぶ白翎島付近も最近はざわついている。この島は38度線以南にあり、戦後は米軍がいち早く占領。朝鮮戦争後も韓国領に編入された。これまで中国や北朝鮮が領土権を主張することもなく、領土問題とは無縁と思われてきたのだが…。

 白翎島は北朝鮮を監視する戦略上の重要拠点でもあり、韓国軍がレーダー基地を設置している。また、島は黄海の入口に位置していることから、中国海軍根拠地の威海衛や旅順を抑えるにも好都合な場所だ。海洋進出を狙う中国海軍には、邪魔な存在なのだろう

 最近、中国漁船や中国海軍艦艇が島に接近することが増えている。さらには、付近の海域で中国海軍の軍事演習が盛んに行われるようにもなった。韓国側が「威嚇されている」と感じるに充分な状況。軍事筋には、中国が白翎島を狙っていることを指摘する者も多いのだとか。

 韓国政府の弱腰姿勢も相まって、中国が図に乗り、この先さらに過激な行動に出てくる可能性は多分にある。韓国海軍は竹島よりもむしろ、こちらの方面への監視強化と戦力配置を急ぐべきなのでは。


白翎島から対岸の北朝鮮側を眺めた360度写真

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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