竹島防衛計画書を国会へ提出した韓国軍

竹島防衛計画書を国会へ提出した韓国軍

海上自衛隊のイージス艦・あたご型護衛艦

 自衛隊が竹島(韓国名・独島)に侵攻してくることを予想して、韓国軍は竹島の防衛計画を練った。韓国国会にも計画書を提出したという。今年2月に韓国紙・東亜日報がこれを報じ、翌日には日本政府の岸防衛大臣が、

 「(韓国軍の作戦計画が)事実だとすれば、まったく受け入れられるものではない」

 と、記者会見で強い不快感を示している。在日本韓国大使館に厳重な抗議がされて、日韓間にまた争いの火種が増えてしまった。

韓国軍は2000基のミサイル配備を計画中

 日韓の軍事力を比較してみると、第一線の主力機や早期警戒機などの航空戦力はその数において航空自衛隊が優勢。また、イージス艦や潜水艦などの洋上戦力は、海上自衛隊が圧倒的というほどに優勢である。

 自衛隊はこの優勢な戦力を総動員して竹島周辺の制空権・制海権を奪取した後、保有する大型揚陸艦を使って部隊を上陸させて島を征圧するだろう。というのが、韓国軍の想定する自衛隊による竹島奪還のシナリオだ。

 これに対して韓国軍は、戦闘機とイージス艦を総動員して上陸阻止の行動に出る。さらには、韓国が開発した玄武ミサイルも、航空戦力や洋上戦力の劣勢を跳ね返す有力な防衛手段として活用することが計画には盛り込まれている。

 玄武ミサイルは、北朝鮮が38度線に配備した大量の大口径砲に対抗するため開発された兵器。韓国軍は、すでにこれを800基ほど保有している。また、巡航ミサイルの玄武3、潜水艦から発射できる玄武4など新型や派生型も次々に開発しており、最終的には2000基を配備する予定とか。それには莫大な予算が必要になる。

侵略の脅威をあおれば国防予算は増える

侵略の脅威をあおれば国防予算は増える

発射される玄武2 出典 Sinthia Rosario [Public domain], via Wikimedia Commons

 自衛隊侵攻がさも竹島奪還を計画しているかのようにあおり、それを阻止するには、玄武ミサイルが有効な兵器だと喧伝する。と…、竹島防衛の計画書は、「予算獲得の手段だったのではないか?」そんな疑念も湧いてくる。

 韓国軍は他にも軽空母や原子力潜水艦など、北朝鮮相手には必要のない高額な兵器の保有計画がある。予算獲得のためには、その兵器を使用する必要がある仮想敵国の存在が必要だ。それには日本が最も適した相手ということなのだろう。

 戦前の日本もまた陸軍はソ連、海軍は米国と、強力な仮想敵国の脅威をあおって莫大な軍事費を獲得してきた歴史がある。軍官僚の思考というのは今も昔も変わらない。

 考えてみれば、日本の国防当局のやり方も似たようなものか。連日のように中国艦船が侵入してくる尖閣列島周辺海域と、現時点では、日本がまったく手を出していない竹島とでは状況がまったく違うのだが、それでも、外国軍隊による侵攻の可能性が、防衛装備拡充のためには、有利に働いているのは間違いない。予算要求のために脅威をあおっておいて損はないはずだ。

 実際、尖閣諸島防衛を念頭に水陸機動団を創設されるなど、それなりの予算がつけられている。また、防衛費の使い道にうるさい野党も、これに関しては批判がしづらいといった感がある。どこの国でも領土問題の存在を「恩恵」と感じている軍関係者は多いとは思う。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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