韓国成人4.5%が小学校低学年レベルの読解力

韓国成人4.5%が小学校低学年レベルの読解力

タイ・ミャンマー国境の難民キャンプ内の小学校。こんな教室でも教育を受けられるだけましだ

 2021年の報道で印象的だったのは、韓国の読解力の記事だ。

 韓国教育省および国家生涯教育振興院が2020年10月から2021年1月に、18歳以上の成人1万429人を対象に識字・読解能力調査を行った。その結果、小学校1、2年生水準の読解力の割合が4.5%に。

 朝鮮日報によれば、韓国の成人をおよそ4400万人とすれば、約200万人が基本的読解力を持っていないに等しいという。

 筆者の経験では、カンボジア観光の際にイラスト付きでコミュニケーションが取れる書籍『指差し会話帳』のカンボジア語版を現地人に見せたところ、比較的社会情勢が安定してきてから生まれた20代でも文字が読めないという人が何人かいた。

 カンボジアは、ポル・ポトによる国内での粛清によって高学歴の国民は多くが虐殺された。その後も長らく不安定な社会環境だったことと、貧困層が多く教育を受けられない人もいることから若い世代でも文字が読めない人がいる。

 韓国は、アジア圏内では発展した国の1つでもあるので、識字率や読解力が低いという報道は意外に思う人も多いのではないだろうか。

アジア圏内で識字率100%は韓国でも日本でもない

 そこで、アジア各国の識字率を調べてみた。

 米国の情報局CIAのサイトに各国の識字率が記載されているので、それを参照。基本的には15歳以上の各国国民の識字率だ。

1.北朝鮮:100% 男100%、女100%(2015年)
2.モンゴル:99.2% 男99.1%、女99.2%(2020年)
3.台湾:98.5% 男99.7%、女97.3%(2014年)
4.シンガポール:97.5% 男98.9%、女96.1%(2019年)
5.中国:96.8% 男98.5%、女95.2%(2018年)
6.フィリピン:96.3% 男95.7%、女96.9%(2019年)
7.インドネシア:96% 男97.4%、女94.6%(2020年)
8.ベトナム:95.8% 男97%、女94.6%(2019年)
9.マレーシア:95% 男96.2%、女93.6%(2019年)
10.タイ:93.8% 男95.2%、女92.4%(2018年)
11.ミャンマー:89.1% 男92.4%、女86.3%(2019年)
12.ラオス:84.7% 男90%、女79.4%(2015年)
13.カンボジア:80.5% 男86.5%、女75%(2015年)

・世界平均:86.7%:男90.1%、女83.3%(2020年)

日本99%、韓国97.9%の識字率

 CIAのサイトでは日本と韓国の数値は掲載されていない。

 そもそも、日本では識字率調査が行われていないという。ユニセフの「世界子供白書2019」によれば、日本は2002年に99%とされ、世界ランキングでは米国やニュージーランドなどと並んで28位に入る。

 一般的な日本人は、識字率が100%と思っているかもしれないが、アジア内で100%は北朝鮮だけ。

 日本には太平洋戦争後に教育を受けられなかった高齢者層がいるし、令和2年においても小学校の就学率は99.96%と、学校に行っていない子供も少なからずいる。

 韓国の識字率は日本より低く97.9%とされる。ランキングでいえば68位あたり。それでも世界平均は大きく上回っているので、まだましだ。

虐殺、貧困、地形、革命、宗教などが低識字率の要因に

虐殺、貧困、地形、革命、宗教などが低識字率の要因に

ラオスの首都ビエンチャンの学生。首都だからこそ女性も教育を受けられるが、地方や山岳では教育格差が大きい

虐殺、貧困、地形、革命、宗教などが低識字率の要因に

 カンボジアは虐殺の歴史的な影響、それからラオスは貧困だけでなく、山岳などで物理的に学校に通えない子供、ベトナム戦争に影響された革命などもあって、識字率は世界平均を超えていない。

 また、世界的には、女性の識字率が低い傾向にある。

 アジアではモンゴル、フィリピンが女性の方が識字率が高いが、ラオスやカンボジア、ミャンマーのほか、世界を見ても宗教や生活習慣として男尊女卑が根強い地域は、男女の識字率に大きな開きがある。

 韓国語のハングルはITなどデジタルに非常にマッチした文字だ。そのため、韓国はわりとネットが発達しているとも言われるが、一方でその悪影響なのか、識字率ランキングはわりと低くなっているようである。

高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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