エンタメ関係者に兵役免除がない韓国
韓国内で兵役が問題になっている防弾少年団（BTS） 出典 Dispatch [Public domain], via Wikimedia Commons
2021年11月、12月と韓国内のメディアで兵役問題がたびたび取り上げられていた。
韓国エンターテインメントのトップともいえる存在の男性グループ「BTS」が、兵役の問題に直面しているからだ。メンバーの1人が兵役の年齢制限に近づき、入隊しなければならなくなっているのだ。
これまでも韓国芸能界では男性芸能人の兵役問題はあった。
今になって注目されたのは、11月20日に韓国の国会でBTS兵役問題に絡み年齢制限が30歳にまで引き上げられたからだ。さらに同月25日にBTSの兵役免除も取り上げられている。
韓国内では芸能人優遇に対して賛否両論あり、議論になっている。
兵役がある国では、大なり小なり男性のキャリアで問題が起こる。それまで仕事などで得た経験や収入が兵役で止まり、女性や兵役に行かなかった人とキャリアに差が出てしまう。
今回のBTSにおいては、先日アジア人初の米国の音楽大賞を受賞など活躍が顕著。経済効果は絶大で、韓国経済や文化に寄与すると考える人とそうでない人に分かれる。
韓国では、オリンピックなどで活躍したスポーツ選手や世界的に功績を挙げた芸術家は兵役免除されてきたが、エンターテインメント関係者には適用されてこなかった。そのため、より議論が活発になった。
アジアでは韓国とベトナムのみ兵役がある
世界には韓国同様、近隣国などと火種を抱えている国も少なくない。
そういった国には、軍事力確保のために兵役があるケースが多いが、アジア圏内では、実は韓国とベトナムくらいしか全男性に課せられる兵役を採用していない。あとは北朝鮮は、表向きは志願制だが実質的には兵役義務があるくらい。
韓国は、18歳からが徴兵検査対象で、19歳で検査を受け、20歳から30歳の間に兵役に就く。
期間は配属先で違い18～22か月。ただ、除隊後も8年間は予備役、満40歳まで「民防衛（民防衛隊）」と呼ばれる状態で、実際には長い期間の服務義務が発生する。
韓国の兵役には優遇制度があり、高学歴の人は、代替服務として36か月間研究職に務めると兵役を全うしたことになる。また、友人と一緒に志願すれば、配属先も友人と同じところという制度もある。
芸能人は、多くが広報に配属され、基礎訓練も短縮されたりなど法令で定められていない優遇がある。これが韓国内で批判される要因にもなる。
職業不問で2年間の兵役義務を課すベトナム
兵役も悪いことばかりではなく、こういったアウトドアのスキルが身につく
社会主義国のベトナムでは、18歳から25歳の男性に兵役の義務がある。
期間は約2年間。免除対象は身体が不自由な人や戦時中に北ベトナム軍に従軍して亡くなった兵士の息子などが条件に上がっているのみで、芸能人など職業は関係がない。
ただ、ベトナム芸能人は、国外にも名をとどろかせるような人は、まだそれほどいないので、国内で芸能人の兵役免除は議題にならないようだ。
くじ引きで兵役免除が決まるタイ
タイの徴兵くじ引きで担当者が、対象者が引いた赤（兵役行き）のくじを開いて見せる
タイは兵役はないが徴兵はあり、21歳から29歳くらいまでのすべての男性が対象となる。
ただ、中学高校で予科訓練を履修していれば免除。また、タイの徴兵は、くじ引きで、先の年齢までにくじを引き、黒なら免除、赤は2年間の兵役となる。
タイ芸能人は主に富裕層の子息ばかり。軍事教練を履修しているケースがほとんどで、芸能人が兵役に行くことは、ほぼない。
まれにあっても韓国のように広報のPRの一環などで、一般人と同じような訓練は受けていない。
こう見ると、韓国の兵役は、アジア内では最も厳しいルールが若い男性らに科せられていると言える。世論が右往左往するのは、当然のことなのかもしれない。
高田 胤臣（たかだ たねおみ）
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』（イースト・プレス・2018年）、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』（彩図社、2019年・皿井タレー共書）、『ベトナム裏の歩き方』（彩図社、2019年）など、近著『亜細亜熱帯怪談』（晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス）。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と（note）
