弾薬が不足するロシアと石油がほしい北朝鮮

弾薬が不足するロシアと石油がほしい北朝鮮

ソ連製のATS-59砲兵トラクターを元にした「トクチョン」 出典 Stefan Krasowski [Public domain], via Wikimedia Commons

 最近になって米国の複数のメディアが、ロシアが北朝鮮から大量の砲弾やロケット弾を購入していると報道した。

 この件に関して、米国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官が、9月6日に記者団のインタビューに応じ、

 「ロシアが北朝鮮から買う可能性のある弾薬は、ロケット弾や砲弾など数百万発になるだろう」

 と、語っている。

 現在は、まだ購入には至っていないが、その可能性は濃厚だと米国政府は見ているようだ。

 ウクライナ紛争が予想外に長期化し、ロシア軍の防衛産業は弾薬の生産が追いつかない状況。

 ウクライナ軍もその弱味をつくように、ロシア軍の弾薬庫に攻撃を集中している。

 不足する弾薬を近隣諸国から輸入しようにも、西側諸国はウクライナ侵攻に反発して経済制裁を実行中。売ってくれるはずもない。

 また、中国も欧米の批判を恐れて支援には二の足を踏んでいる。

 そうなると頼れるのは、同じように世界から嫌われ者認定されている北朝鮮だけ。今さら何を言われようが、怖いものなしの状況なだけに…。

 国連の経済制裁に苦しむ北朝鮮としては、ロシアの石油は喉から手がでるほど欲しい。

 弾薬とのバーター取引とか持ちかけられたら、すぐにも飛びつきそうではある。

北朝鮮の弾薬備蓄量は世界有数?

 最近になって韓国軍が、全面戦争が起れば、数日で弾薬が尽きると露見したことが話題になった。日本の自衛隊も1、2週間が限度とか。

 しかし、北朝鮮軍は、60年代から3か月間の戦争を継続できる弾薬を常に備蓄することを心がけてきた。

 日韓と比べれば、生産能力が著しく劣るだけに、戦争が始まる前から備蓄して備えるという方針が徹底しているのだろう。

 北朝鮮の軍事技術は、旧ソ連やロシアから供与されたものが多く、砲弾やロケット弾の規格もロシアに準じている。

 ロシアとは鉄路で結ばれているだけに、契約が成立すればすぐに弾薬を鉄道輸送でウクライナの前線へ運び、そのままロシア軍の大砲で使用することが可能なのだ。

もはや開き直って堂々と商売できる

 すぐに使用可能な弾薬。ロシアとすれば喉から手がでるほどに欲しい。その足元を見ながら、北朝鮮側は有利に交渉を進めていることだろう。

 実は、北朝鮮は兵器輸出の実績豊富な武器輸出国でもある。

 経済制裁が本格化する前、2009年に米国の外交政策分析研究所が推計したところによれば、北朝鮮はイランやパキスタン、シリアなどに年間15億ドル(当時のレートで約1450億円)程度の中距離ミサイルやそのシステムを輸出していたという。

 また、2020年には、デンマーク人のジャーナリストが北朝鮮による武器輸出の実態を暴露している。

 アフリカのウガンダに秘密裏に武器工場を建設していたというのだ(ドキュメンタリー撮影のために架空の商談を持ちかけて実態を明らかにした)。

 有力な外貨獲得の手段をそう簡単に手放すことはできない。経済制裁を逃れる手段を模索しながら、密かにセールスを続けていたのだ。

 それだけに、ロシアから申し出は魅力的。良い商売になると踏んでいることは間違いない。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社)、近著『明治維新の収支決算報告』(彩図社、2022年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。

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