「韓国で稼いで一軒家を建てた」飛び交ううわさ

「韓国で稼いで一軒家を建てた」飛び交ううわさ

韓国出稼ぎは稼げるとタイ農村で話題になっている

 東南アジアのタイでは、東北部などの農村地帯の若者たちの間で韓国に出稼ぎすることが話題になっている。

 タイの平均世帯収入は、2万6000バーツ(約10万1000円)ほどとされるが、格差社会のため、平均以上を得ている国民は2割程度とも言われる。

 首都バンコクと地方の格差も大きく、元より農村地帯の若者はバンコクなどに出稼ぎに行っていた。

 かつてはドバイや日本など海外に行くケースも見られた。現在は新型コロナウイルスの影響で、バンコクでも職を見つけられない人がおり、韓国に目をつけているようだ。

 若い人の間では、「どこの村の誰が韓国で稼いで一軒家を建てた」「バンコクよりも短期集中で稼げる」「韓国で働いているタイ人はみんな金持ちになって帰ってきた」などのうわさが飛び交う。

 季節的に今、タイの田舎の若者が注目するのは、主に農園などでの収穫を手伝う季節労働での出稼ぎだ。

タイ平均世帯収入の3倍は稼げる

タイ平均世帯収入の3倍は稼げる

農業に慣れた若者なら農園での季節労働は簡単だという楽観的な考えも出稼ぎを安易に検討させる(著者撮影)

 韓国政府は、タイなどのいくつかの国に非専門人材の外国人労働者を受入れる「雇用許可制(EPS)」を2004年から実施している。

 18~39歳までの外国人で、事前に韓国語の語学能力テストなどを受ける必要があるが、韓国の最低賃金法が適用されるなど、ビザや就労時の権利なども保障される。

 韓国の最低賃金は現在時給9160ウォン(約956円)なので、1日8時間25日稼働だとすれば約19万1000円になる。

 職種は農業、畜産、工場勤務などで雇用がある。一説では、韓国政府はEPSでのタイ人の雇用には7万5000バーツ(約29万3000円)を保証しているとも言われる。

 農村では1万バーツ(約3万9000円)を稼ぐことも難しいので、7万5000バーツなら実に7倍超、平均世帯収入から見てもおよそ3倍となる。

9割は非EPS利用の不法就労者

 しかし、落とし穴もある。

 在韓タイ大使館によれば、韓国にいるタイ人労働者は約20万人で、EPSを利用した正規の労働者は1割にしかならない。

 残りは観光ビザなどで入国して、90日間滞在許可期間に不法就労し、期限以降に不法滞在者として労働を継続する。

 補償なども何もない劣悪な状況下に置かれ、適切な治療などが受けられずに韓国で亡くなるケースも増えているという。

 こういった不法就労者は、タイ国内のブローカーを経由して仕事を斡旋してもらう。

 その際に高額な手数料を支払うため、90日の滞在期限を超えてもできるだけ韓国に残ろうとしてしまう。

 正規のブローカーも含め、手数料は安いところでも3万9000バーツ(約15万2000円)、平均で5万1000バーツ(約19万9000円)と言われる。

 いずれでも平均賃金よりも高額なので、貧困層からすれば厳しい出費で、取り返そうとする気持ちもわからなくはない。

口コミ情報で韓国出稼ぎブームか

口コミ情報で韓国出稼ぎブームか

韓国への出稼ぎのカギはどのブローカーを経由するか。正規と悪徳の違いは韓国政府の語学検定の有無など(著者撮影)

 タイ人の就職は、近年こそネットで探すことが当たり前になったものの、農村地帯などは、今も口コミで探すことが多い。

 誰かがタクシーで儲けたと聞けば、村中の若者がこぞってバンコクでタクシー運転手になり、悪いケースでは、売春で稼いだ女性の後を追って夜の街に入っていく人もいる。

 それが今、東北部の若者たちは韓国に注目していて、向こう数年間くらいは韓国出稼ぎブームになるかもしれない。

高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
タイ・東南アジア裏の歩き方ch(YouTube)在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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