すでに平均年収で韓国に抜き去られた日本

すでに平均年収で韓国に抜き去られた日本

平均年収では日本を抜き去った韓国

 8月5日に韓国労働雇用部(厚生労働省に相当)が、来年度の最低賃金は5.1%増の時給9160ウォンになると発表。日本円に換算すると879円である。

 日本でも来年度の最低賃金が大幅に引き上げられることになったが、上げ幅は3.1%しかなく、先進国の中では、かなり低い数値。全国平均の最低賃金は930円になるのだが、地域による格差も大きい。最も低い県だと820円、30県が韓国の最低賃金を下回る

 また、日本人にとってはショックなデータがもう1つ。OECD(経済協力開発機構)が2019年に行った調査によれば、購買力平価ベースの平均年収では、日本の3万8617ドルに対して、韓国は4万2285ドルと、すでに抜き去られてしまっている…。

文政権5年で最低賃金1.5倍増

 日本が20年以上も横ばい状態なのに比べて、近年の韓国ではすさまじい勢いで賃金が上昇した。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「最低賃金を1万ウォンに引き上げる」という公約を掲げて選挙に出馬、大統領就任後の2018年には、最低賃金を前年比16.4%に引き上げた。2019年にも前年比10.9%増の大幅な引き上げが実行されている。

 その後はコロナ禍などもあり、ペースはかなり鈍ってしまい、任期中に公約を実現することはできなくなった。しかし、前政権の2016年には6030ウォンだった最低賃金は、この5年間で1.5倍も上昇している。ちなみに、日本の2016年度の最低賃金は全国平均で823円。5年間の賃金上昇率は約7%しかなく、この数字を見れば韓国に追いつかれてしまうのも当然だろうか。

 また、バブル景気の終焉(しゅうえん)からデフレ傾向が続く日本と比較して、韓国では賃金上昇に合わせて物価も上昇し続けている。旅行者の話を聞けば、東京とソウルの物価はほとんど変わらないという話も聞く。

ビックマック指数でも韓国に追い抜かれ…

ビックマック指数でも韓国に追い抜かれ…

ビッグマック指数は1986年に英国『エコノミスト』が考案したもの

 各国にあるマクドナルドのビッグマックの価格を他国と比較して、その国の物価や購買力、賃金水準の判断基準にする「ビッグマック指数」というものがある。

 現在、日本のビッグマック価格は米ドル換算で3.55ドル、韓国は4ドル。アメリカの価格を基準としたビッグマック指数は、韓国がマイナス29.23で、アジアではシンガポールに次ぐ上位につけている。一方、日本はマイナス37.21ですでにタイに追い抜かれ、中国にも追いつかれそうな状況だ。

賃金が上昇した分、就職は難しくなった

 しかし、韓国の急激な賃金上昇には弊害も多々ある。以前からそれはよく指摘されている。人件費を抑制したい企業側は、新規採用を抑えるようになり、雇用が減少している。コロナ禍の影響もあり、2020年度には15~29歳の若者の失業率は10.7%とかなり高い。

 また、臨時職や非正規雇用の割合も36.8%と労働者人口の3割を上回る。職に就くことができず自営業者なる者も多い。

 韓国では飲食や小売、遊興サービス業など様々な業種に零細な個人経営者が従事しているのだが、年間所得1000万ウォン(約97万円)に達していない者が51.1%もいるというから非正規雇用以上に厳しい

 コロナ禍以前には、日本各地に韓国人観光客が押し寄せ、日本人も隣国の景気の良さと賃金上昇を目の当たりにしている。しかし、その一方で韓国では、日本企業への就職を目指す新卒者も増え続けている。

 韓国産業人力公団を通じて日本に就職した人の数は、この5年間で7倍にもなったという。最低賃金では日本を上回ったというのに、だ。

 賃金上昇の恩恵にあずかれる者は限られているということ。日本もまた非正規雇用が増えて格差がよく話題になるから、状況は似たようなものか。

 現実の状況を平均やビッグマック指数では測ることは難しい。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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