そのため、日本人は我々在日朝鮮人の面前で朝鮮人という呼称を使わない。それは日本人の中で、朝鮮人が蔑視用語であるという認識があるからだ。

 このように呼称の点でも、在日朝鮮人に対する差別意識は残っていると考えられる。そして、在日朝鮮人側もこのことを内面化している部分があり、日本人に対して自分のことを朝鮮人と伝えることに気後れする者もたくさんいる。それはやはり関東大震災時の虐殺事件を始め、朝鮮人と名乗ることで危害を加えられたり、差別されたりした歴史的な記憶が世代を越えて今でも残っているからだ。

Q 関東大震災時の朝鮮人虐殺事件を繰り返さないためにはどうすべきでしょうか。

 まずは事件の全容を明らかにすることが大前提である。事実を明らかにしないと今後のための教訓は生まれない。そして、全容を解明した上で、日本政府は、事件を引き起こした責任を認めるべきである。政府が責任を認めて謝罪すれば、日本全体が事件の当事者としての認識を持つことができる。

 一方、その国家を動かすのは誰か。民衆である。日本の民衆には国の加害責任を自覚した上で、国家の責任を追及する責任がある。
 
 関東大震災の虐殺事件は日本だけの問題ではなく、他の国でもジェノサイド(大量虐殺)として起こりうるものだ。今後、地球上で同様の事件を起こすべきでないと国際社会に知らしめるという意味でも、この事件の究明は世界史的な意義がある。

 

急がれる事件の全容究明

 関東大震災が発生した当時、なぜ在日朝鮮人がターゲットとされ殺害されたのか、インタビューを通してその理由を垣間見ることができた。金哲秀氏の説明の通り、事件の全貌が明らかにされない限り事件から教訓を引き出すことはできないだろう。

 事件から今年で96年が経過した。

 事件がどのように行われ、日本政府に一体どのような責任があるのか明らかにするためにも、事件の全容究明が急がれる。

金哲秀朝鮮大学校朝鮮問題研究センター副センター長 プロフィール
1965年東京生まれ。1988年朝鮮大学校政治経済学部卒業、90年同校研究院卒業。現在、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター副センター長、在日朝鮮人関係資料室長を務める。

朝鮮大学校朝鮮問題研究センター刊行:
『記録集・関東大震災95周年朝鮮人虐殺犠牲者追悼シンポジウム、関東大震災時の朝鮮人大虐殺と植民地支配責任』(頒価1300円、送料別途)
申込、お問合せは、朝鮮大学校朝鮮問題研究センターまで。
FAX:042-346-0405、mail:kucks@korea-u.ac.jp

八島 有佑

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