かつて協定永住資格があったころ、ピアニストの崔善愛氏が資格を喪失したというケースがあった。彼女は外国人登録の更新時に指紋押捺(現在は廃止)を拒否したため再入国許可を受けることができず、そのまま出国したために協定永住資格を喪失したのである(崔善愛氏は外国人登録法改正により2000年に再び特別永住資格を獲得)。

 これは協定永住の例だが、当然、特別永住者も再入国許可を受けずに出国すれば同様の事態となる。これに対しては、「再入国許可を受けて出国するなど制度に従えば資格ははく奪されることはない」という意見もある。それも確かに事実であるが、ここで重要なのは「資格であるために一定の条件の下ではく奪可能」という点だ。
 

資格である限り日本政府の判断で奪われかねない不安

 また、特別永住者制度の成り立ちについても手続き上の指摘がある。前述した通り協定永住資格は1965年の日韓法的地位協定に基づくものである。同協定は「条約」として国会承認を経て公布され、国内法としての効力を有するにいたった。一方、特別永住資格は1991年の日韓覚書を受けて法律を制定している。両政府は「覚書」を条約同様に遵守する義務があるものの、日韓覚書については日本で国会の承認手続きがとられていない。

 このことから、「条約に基づいて設けられた協定永住資格と、覚書に基づいて設けられた特別永住資格とでは重みが違う」というわけである。この点で「将来、日本政府が独断で特別永住者制度を改悪する可能性がある」という不信感があると言える。

 前述の通り、植民地出身者とその子孫たちは、日本の植民地支配の結果として日本に住み続けているわけだが、日本人ではないことを理由に法律や制度に振り回され続けてきた。

 「資格である限り日本政府の判断で奪われかねない」という不安を持つのは当然と言えるし、「もし永住資格が権利化されれば、政府が法改正などでむやみにその権利を奪うことはできなくなる」という主張も理にかなっている。

 旧植民地出身者たちが歩んできた歴史を考えれば、日本政府には特別永住者たちの声に真摯に耳を傾ける必要があると言えよう。

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