中国人と同等の7万円ほどの給与が支払われている

中国人と同等の7万円ほどの給与が支払われている

朝鮮族自治州延吉市 出典 kimmun [Public domain], via Wikimedia Commons

中国人と同等の7万円ほどの給与が支払われている

 中国吉林省の関係筋によると、現在、延吉を中心に延辺朝鮮族自治州に3万人ほどの北朝鮮人労働者が働いていることが明らかになった。

 その多くは工場で働いており、20、30代の女性が大半を占めるとのこと。

 給料は1人あたり4000元から4500元(約6万2000円~7万円)ほど支払われており、この金額は延吉での同世代の給料と同水準か、むしろ高い

 しかし、前出の関係筋によると、彼らは中国の法律上の労働者としては扱われておらず、中国の法律上の労働者であれば、雇用する企業へ中国人、外国人問わず福利厚生として「五険一金」という保険提供(一部地域は雇用者の任意)が課せられているが、北朝鮮人労働者へは提供されていない。その分、給料を上積みするように北朝鮮側が求めた可能性がある。

500元の手数料・保険分を上乗せか

 五険一金とは、養老(年金)、医療、失業、労災、出産(生育、育児)保険のことで、日本の厚生年金のように企業側と労働者の双方で負担する。おおよそ支給される給料の4割相当を五険一金分として企業が負担することになり、その他の各種補助を含めると中国で企業が人材を維持するためには支払っている給料の2倍が必要となる

 北朝鮮人労働者へは給料以外に寮や送迎バス、3食も雇用する企業が負担しているものの同様の技能を持つ中国人労働者の半分程度の人件費で雇用できていると推測される。

 加えて、延辺朝鮮族自治州が1人500元を手数料名目で徴収している。どうやらそれも踏まえて給料へ前もって加算されているようだ。

 そのため、現在、延辺に滞在して働く3万人の北朝鮮人は就労ビザではなく、観光ビザなど非労働ビザでは働いているとみられる。または、羅先住民限定で吉林省へビザなしで入国、滞在できる特別制度を力技で応用させている可能性もある

非労働者扱いで1日16時間労働も

非労働者扱いで1日16時間労働も

延辺朝鮮族自治州人民政府サイト

非労働者扱いで1日16時間労働も

 勤務するのは、縫製やかつら(ウィッグ)、食品工場など工場が主で、北朝鮮人は管理者がしっかりと常駐して管理されるので、不満を口にすることなくよく働くと重宝されているという。中には1日16時間働かせている工場もあるが、州や市から注意などが入ることはないようだ。これらの話からも正規の労働者と扱われていないことが分かる。

 「国連制裁で北朝鮮労働者が減ったのでかつらの編み込み作業を東南アジアへ移管させたのですが、技術力がなく、品質が落ちたので、また作業を延吉へ戻しています。北朝鮮人女性は器用なんで品質は向上しています」(朝鮮族経営者)

 中国も昨年末までに北朝鮮人労働者を帰還させる国連制裁を履行しているはずだ。しかし、新型コロナウイルスの問題で中朝国境が封鎖されて帰国できないため国も地方政府も事実上、黙認しているようだ。

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