デパートの売り子から鴻祥を興すチャイナドリーム

デパートの売り子から鴻祥を興すチャイナドリーム

丹東で開催された北朝鮮博覧会での鴻祥グループブース

北朝鮮への核物質密輸で拘束されて4年 美人経営者の遺産(1/2)の続き。

 そもそも馬暁紅被告(アメリカ国内で起訴されたため被告と表記)が注目されたのは、ただ“美人”だっただけではない。彼女の経歴がチャイナドリームとも呼べるようなシンデレラストーリーだったからだ。

 馬暁紅は丹東のデパートの店員として働く1売り子だったとされる。デパートに勤めながら中朝貿易を始め軌道に乗ったため2000年に鴻祥という名のつく会社を起業。2016年9月、アメリカの制裁指定を受け、隠されるように中国公安に拘束される時点ではグループ総勢700人を抱える丹東を代表する企業に成長させていた。

 しかも、2013年には遼寧省人民会議へ選出されている。

中国人女性のロールモデルに

 中国は日本よりも女性の起業家や経営者が多く、専業主婦という言葉が存在せず、夫婦共働きが当たり前の社会なので、馬暁紅は起業をを目指す若い中国人女性のロールモデルであり、憧れの存在となった。

 丹東は地政学的に中朝貿易に従事する人が多い。しかし、従事する人の多くが言葉や北朝鮮人のメンタリティを理解する朝鮮族が多く、漢民族など朝鮮族以外は少ないとされる。

 そこへ漢民族である馬暁紅が台頭して一大勢力を形成するにいたったのでより注目されたわけだ。

 と、彼女の経歴は、自社で発行した会社紹介のパンフレットや公式サイトに基づいている。そのため、誇張なども含まれており、すべてが事実ではないと思われる。

 中国の総経理(=社長・CEO)は、男女問わず、目立ちたがる人が多い。会社案内の一面にドーンと登場したり、社員の集合写真でも中央に陣取って写っていることもよくある。

 日本だと企業イメージを兼ねているような一部の経営者を除き、縁の下の力持ちへ徹したり、経営者がそこかしこへ露出して全面に押し出たりすることは少ないのではないだろうか。

馬暁紅失脚で大同江ビールの独占販売が終焉

 馬暁紅は中朝貿易から始め、瀋陽の中朝合弁ホテル「七宝山ホテル」、丹東の北朝鮮レストラン「柳京飯店」、北朝鮮旅行の代理業務もしている「鴻祥国旅」なども鴻祥グループとして経営していた。七宝山ホテルは、2018年1月に北朝鮮との合弁事業が国連制裁で禁止されたため中国企業へ売却されホテル名を変更して営業を再開している。後者2社は現在も営業が確認されている。

 馬暁紅が残した遺産とも言うべきものは、「大同江ビール」の中国輸入を実現したことではないだろうか。馬暁紅が中国国内で拘束されるまでは1社が独占輸入販売していたので、販売販路も少なく、かつ高額だった。しかし、馬の失脚が影響したのか、北朝鮮は鴻祥との独占販売権を終了させ、大同江ビールを販売する取扱店を大幅に増やした。その結果、今では中国最大のECサイト「淘宝網」などでも購入できるようになり価格も大幅に下がった。

 もしかするとこれが馬暁紅が残した最大の遺産なのではないだろうか。

記事に関連のあるキーワード

こんな記事も読まれています

コメント・感想

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA