九州無償化裁判が全国4件目となる敗訴確定

九州無償化裁判が全国4件目となる敗訴確定

最高裁判所

九州無償化裁判が全国4件目となる敗訴確定

 朝鮮学校を高校授業料無償化制度の対象に指定しなかったのは違法として、九州朝鮮中高級学校(北九州市)の卒業生68人が、国に対して約750万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は学校側の上告を棄却した。決定は5月27日付。

 これにより国の指定判断は適法とした1、2審判決がこれで確定した形だ。東京、大阪、愛知、広島、福岡の全国5地裁・支部で同種訴訟が起こされており、敗訴が確定したのは東京(2019年8月確定)、大阪(19年8月確定)、愛知(20年9月確定)の訴訟に続いて4件目。未確定の広島の訴訟は、昨年10月27日に原告側が上告しており、最高裁に係属している状況だ。

朝鮮総連との密接な関係を理由に制度から除外

 高校無償化制度は、民主党政権時代の2010年に導入された。私立高に就学支援金を支給するというもので、朝鮮学校を含む外国人学校も要件を満たせば支給対象であった。

 だが、2012年に自民・公明連立政権に交代した後、当時の下村博文文部化学大臣は朝鮮学校を無償化の対象としない方針を表明。下村氏は「拉致問題の進展がない」ことや「朝鮮学校と朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)が密接な関係にある」という理由をあげて「国民の理解を得られない」と説明した。翌年には文科省が省令を改正し、朝鮮学校は対象から除外されることになった。

 朝鮮学校側は突然の制度変更に「朝鮮学校を除外したのは不当」と反発。朝鮮学校の高級部(高校に相当)がある全国5か所で訴訟を起こし、対象から除外した処分の違法性が争われていた。

全国4訴訟で「朝鮮総連から不当な支配のおそれ」認定

 今回確定した福岡裁判では、福岡高裁(2020年10月)が「教育について朝鮮総連からの不当な支配を受けているという疑念は払拭されていない」という理由から朝鮮学校を制度から除外した文科大臣の判断は「違法ではない」と判断。原告側の訴えを退けていた。

 この「学校運営において朝鮮学校が朝鮮総連に不当な支配を受けている」という政府側の論理はすでに確定していた東京、大阪、愛知の3訴訟でも認定されている。

 東京地裁(17年9月)は「朝鮮総連と朝鮮学校が密接な関係にあり、無償化の支援金が授業料に充当されるか疑いが生じる状況だった」と指摘、名古屋地裁(18年4月)では「朝鮮総連や傘下団体により学校運営が不当な支配を受けている」と判断した。それぞれ2審の高裁が地裁判決を支持して原告敗訴となった。

 一方で大阪裁判については1審の大阪地裁で原告側が勝訴を得ていた(17年7月)。これが全国の訴訟で唯一の勝訴であったが、2審の大阪高裁(18年9月)では「朝鮮総連から教育の自主性をゆがめる不当な支配を受けている疑いがある」として一転して原告側が敗訴している。

広島無償化裁判は最高裁の判断待ち

 残すところ最後となったのが広島無償化裁判。広島朝鮮初中高級学校(広島市)を運営する学校法人「広島朝鮮学園」と元生徒109人が、処分の取り消しと損害賠償を国に求めているが、1審、2審では他所と同様の判断が下っている。

 広島地裁(2017年7月)は「北朝鮮や朝鮮総連の学校への影響は否定できず、無償化の支援金が授業料に充てられない懸念がある」など国側の主張を認め、原告が敗訴している。2審もこれを支持。

 原告側は高裁判決を不服として昨年10月に上告しており、最高裁の判断を待つ状況にある。

八島 有佑

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