中朝は条約締結節目の年に記念行事を開催

中朝は条約締結節目の年に記念行事を開催

2019年6月20日、金正恩総書記が平壌で習近平国家主席と会談(提供 コリアメディア)

 相手国が攻撃を受けた際の軍事援助などを定めた「中朝友好協力相互援助条約」(以下、中朝友好条約)が7月11日で60周年を迎える。今年は20年ごとの自動更新の節目の年でもあるが、このまま延長される見通しである。

 5月27日、中国・王毅外相は北朝鮮・李竜男(リ・リョンナム)駐中国大使と会談し、条約締結60周年の記念行事を開催する方針を示しており、7月11日の動向に関心が寄せられる。また、米中対立や米朝対話という観点からも中朝友好条約には注目である。

5年ごとの記念行事でトップ会談

 両国は5年ごとの節目の年に記念行事を開催するなど、中朝友好条約を重んじてきた。たとえば40周年(2001年)、45周年(2006年)、50周年(2011年)は代表団を相互に記念行事に派遣した。

 北朝鮮側は金正日(キム・ジョンイル)総書記や金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長(当時)などが中国代表団と会談。中国側は江沢民主席(2001年)、胡錦濤主席(2006年、2011年)が代表団に応対している。トップが会談しているのを見ても、両国が記念日を大切にしてきたことがわかる。

記念行事が確認されなかった2016年

 その中で、前回の55周年(2016年)は金正恩(キム・ジョンウン)総書記と習近平国家主席が祝電を交換したのみで記念行事開催は報じられていない。

 節目の年には党機関紙・労働新聞による論説を掲載することが恒例であったが、55周年は掲載がなかった。

 これは当時、北朝鮮の核実験実施などで中朝関係が冷え込んでいたことが影響したと考えられる。ただ、2018年以降は中朝関係がより緊密化しており、2016年当時とは異なる。今年の条約締結60周年を重要視していることは間違いない。

 新型コロナウイルスの影響で中朝間の往来が制約される中、過去と同水準で記念行事が開催されるかは不透明であるが、中朝両国は記念日を盛大に祝って国内外に中朝緊密を示すものと考えられる。特に高官往来が行われるか、両首脳がどのような発言、行動を示すかが注目である。

1961年に中国・ソ連と相次いで条約締結

 ではこれほどまでに重要視されている中朝友好条約とは一体どのようなものなのか。

 中朝友好条約は1961年7月11日に締結されたもので、金日成(キム・イルソン)主席と周恩来首相が署名している。これに先立つ7月6日には「ソ朝友好協力相互援助条約」(1996年失効。以下、ソ朝友好条約)を締結しており、北朝鮮は立て続けに中国とソ連と関係を強化したのである。

 契機となったのは、同年5月に韓国で当時少将だった朴正煕(パク・チョンヒ)が軍事クーデター(5.16軍事クーデター)を起こして親米・反共軍事政権を樹立したことである。

 北朝鮮としては、韓国が「米韓相互防衛条約」(1953年)を結んでいる米国とともに北朝鮮を軍事攻撃するのではないかという危機感を抱くようになり、中国やソ連と接近したのである。

 当時は中ソ対立の最中であったが、金日成主席は両国を訪問し、双方との等距離外交を図っている。
 

中朝友好条約は無期限で自動介入条項あり

 ただ、北朝鮮が中国やソ連と締結した条約には差がある。特に「自動介入条項」の有無である。中朝友好条約では、相手国が戦争状態に陥った場合に他方が条件なしに「直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える」と規定されている。これは自動介入条項と呼ばれており、たとえば、北朝鮮が戦争状態に陥った場合、北朝鮮側の意志とは関係なく中国が介入してくる可能性があるというわけだ。

 一方、ソ朝友好条約も同様の戦時援助規定があるが、「極東及び全世界の平和及び安全の保障を目的」とするという前提条件があり、自動介入条項が設けられなかった。

 なお、「無期限かつ20年ごとの自動更新」で現在まで続く中朝友好条約とは異なり、更新手続きが必要であったソ朝友好条約は1996年に失効している。ソ連崩壊や冷戦終了などで北朝鮮とロシアの関係性に変化があったことが影響した。ちなみに、北朝鮮とロシアは2000年に「ロ朝友好善隣協米韓相互防衛条約力条約」を締結しているが、この時も自動介入条項は設けられなかった。

米中対立と米朝対話で注視される中朝友好条約

 このようにソ朝友好条約やロ朝友好条約などと比べ、中朝友好条約はより積極的な軍事介入を規定したものであり、中朝の緊密な関係性を示していると言える。

 中朝友好条約を根拠に中朝関係を「安保同盟」とする見方もあるが、北朝鮮と中国は互いに安保関係とは規定せずに「伝統的な中朝友好関係」「伝統的友情」という表現を使用することが多い。そのため、「韓国国内に米軍を置く米韓安保同盟とは異なる」という主張もなされる。

 ただ、形式がどうであれ中朝友好条約は、中朝関係の礎の1つであるのは間違いない。この60年の間に中朝関係は紆余曲折あったものの、現在の両国の関係性は過去最高水準とも言える。2018年米朝対話が停滞して以降、中朝両国は緊密関係を繰り返し強調してきた。

 現在、米国と対立する中国、その米国との対話を視野に入れる北朝鮮が、それぞれ中朝友好条約をどのように扱うのか注目される。

八島 有佑
@yashiima

記事に関連のあるキーワード

おすすめの記事

こんな記事も読まれています

コメント・感想

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA