しかし、それは幻想だった。「何も持たないで地上の楽園に帰ってきなさい」という言葉を真にうけて船出した人々は、北朝鮮の土を踏んですぐに後悔する。生活は貧しく、日本の親族からの送金がなければ暮らしてゆけない。また、帰還者は同胞からも差別され、当局から資本主義の害毒に染まった者として厳しく監視された

 1980年に産経新聞がマスメディアでは初めて、北朝鮮による日本人拉致事件を臭わす報道を行った。この頃なってからやっと、日本でも北朝鮮に疑いの視線が向けられるようになるのだが…、もう少し早く気がついていれば、9万人を越える人々が悲劇にさいなまれることもなかっただろう。
 

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。

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