北朝鮮外務省が2日連続でアフガニスタン問題に言及

北朝鮮外務省が2日連続でアフガニスタン問題に言及

バイデン政権は9月11日までに米軍のアフガン撤退完了を発表していた

 アフガニスタンのガニ政権が崩壊し、タリバン勢力が全権を握って1週間が経った。間もなくタリバン政権が生まれ、新たな政府の枠組みが発表される見込みである。

 バイデン政権が米軍のアフガニスタン撤退を強行したことが混乱の原因であるとして同盟国からも非難が相次いでいる。

 その中で、北朝鮮外務省は8月20日、21日と2日連続でアフガニスタン問題に言及し、米国を非難した。今年4月以降、北朝鮮国営メディアは米軍のアフガニスタン撤退についてほとんど報道してこなかったが、今回アフガニスタン問題で基本姿勢を明らかにした形である。

 北朝鮮は1973年にアフガニスタンと国交を結んだ。タリバン政権は、かつて米国の支援を受けてソ連と敵対していたことからこれまで承認していなかった。

「米国が平和を破壊」 北朝鮮外務省

 北朝鮮外務省は8月20日に公式サイトで「中国外務省報道官は米国の戦争志向の政策について誠実な反省を要求する」と題した記事を掲載。

 中国の華春瑩報道官が17日の記者会見で「大変な混乱を残した」などと米国のアフガニスタン政策を非難したが、その発言を引用する形で米国への非難姿勢を示した。

 記事は、「現在の国際的世論は主にアフガニスタンの状況とその後の米国の責任に注目し、米国メディアはアフガニスタンに対する米国の政策は完全な失敗であったと告白している」と米国の責任を指摘。また、「アフガニスタンの現実は、米国が世界平和を乱し破壊する無礼な国であり、自国の利益のために何もすることについて何の躊躇もないことを完全に明らかにしている」と強く非難した。

 アフガニスタン問題に限らず、北朝鮮はこれまでも「米国が平和を破壊している」と主張しており、この構図は今回も変わっていない。

記事3本を更新。米国や西側諸国のテロ対策を非難

 翌日(21日)には北朝鮮外務省がアフガニスタン問題に関連して3本の記事を更新。

 このうち、「中国とロシアがアフガニスタン危機をもたらした米国を非難」と題した記事では、中ロ外務省の声明を引用。「軍事的手段による解決策は、はるかに多くの問題を引き起こす」(中国・王毅外相)、「アフガニスタン政府軍とタリバン軍との対立は米国の非建設的な『思考プロセス』の後遺症である」(ロシア・マリア・ザハロワ外務省報道官)と両国の対米非難を紹介した。その上で、「米国こそが世界の平和と安定を損なう原因である」と指摘した。

 また、同日の「反人類的集団テロへの不寛容」と題した記事では、「米国は多くの国で戦争を引き起こし、武力紛争を引き起こした責任を直接負うべき」と非難。西側諸国の軍隊が「テロ対策」という名目で罪のない人々に対して拷問や殺人などを犯しているとして、米国が訴える「反テロ」に疑問を投げかけた。

対米非難も引き続き米朝対話も視野に

 このように北朝鮮外務省は、中国やロシアの報道を引用する形で米国のアフガニスタン政策を強く非難した。

 北朝鮮はこれまでタリバン政権を承認していないが、アフガニスタンにおける米軍の軍事行動には一貫して批判的であり、必ずしも敵対するものではない。テロ行為には賛同しないものの、北朝鮮は「反米」という観点ではタリバンと一致している。タリバン政権承認を巡ってロシアは慎重な姿勢であるが、中国はタリバン政権を容認する方針であり、中ロの動き次第では北朝鮮とタリバンの関係性にも変化があるかもしれない。

 なお、北朝鮮がアフガニスタン問題で米国を非難することと、米朝対話とは切り離して考えるべきであろう。

 北朝鮮外務省は今回、政府としてのアフガニスタン問題に関する立場を明らかにしたのであり、対決と対話を「両にらみ」している対米方針に変更はないとみられる。

八島有佑
@yashiima

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