「新年の辞」の代わりとなった総会報告

「新年の辞」の代わりとなった総会報告

1月1日付の労働新聞より朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会で演説する金正恩総書記(提供 コリアメディア)

「新年の辞」の代わりとなった総会報告

 北朝鮮国営メディアは1月1日、昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会(12月27日~31日)の会議結果を大々的に報じた。

 2022年の方針を示しており、年始の恒例であった「新年の辞」の役割を担っているとみられる。

 ただ、報道では、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、総会で報告した内容が紹介されているものの、大半は国内問題に関するもので、外交や国防関係は詳細が伏せられている。対米・対韓メッセージも皆無だ。

 金正恩総書記は、「非常防疫活動が国家活動の第1順位」と位置付け、新型コロナウイルス対策を徹底するとしており、対中貿易に依存しない「自力更生」確立に注力する姿勢を見せている。

「農村3大革命」提唱。58年前の農村テーゼを発展か

 今回の総会で特に注目すべきなのは、議題の1つである農村問題。

 金正恩総書記は、農村における「思想、技術、文化の3大革命」を提唱した。

 3大革命の内容として、「農業勤労者の頭の中に残っている古い思想を根絶」(思想)、「古い経験に執着し、(機械化など)科学技術を遠ざける傾向を克服」(技術)、「農村の教育と医療サービス水準の向上」(文化)などが挙げられている。農村の近代化が目標のようだ。

 革命のモデルとされたのは、金正恩総書記がたびたび視察してきた三池淵市。

 金正恩総書記は、「全国のすべての農村を、三池淵市の農村の水準にし、裕福で文化的な社会主義理想村にする」と表明している。

 北朝鮮では、1964年に金日成(キム・イルソン)主席が、「我が国における社会主義農村問題に関するテーゼ」を発表し、農村問題解決に向けた全般的な指針を出したことがあった。

 金正恩総書記が今回提唱した農村革命は、この58年前の農村テーゼを継承、発展させたものとも考えられる。

 北朝鮮の指導者として、農村問題を巡る全般的な改革方針を出したのも、この農村テーゼ以来と言える。

穀物の安定供給に向け小麦の生産拡大

 農村革命提唱の背景には、北朝鮮の厳しい食糧事情がある。

 金正恩総書記自身、昨年6月に、自然災害によって「人民の食糧事情が厳しくなっている」と言及していた。

 特に、主食となる穀物の安定供給の確保は、人民生活に直結する問題である。

 この点、金正恩総書記は、今後10年間の穀物等の生産目標を提示。「人民の食生活文化を白米のご飯と小麦粉食品に変える」と述べ、小麦の生産促進にも言及した。

 金正恩総書記は昨年9月にも、最高人民会議(国会に相当)の施政演説で、「農作物の配置を変えて、稲作と小麦、大麦の栽培に方向転換をする」という構想を提示していた。

 これまでのように米だけではなく、小麦など多様な穀物類の自国生産を拡大させることで、人民生活の安定につなげようとする意図が読み取れる。

国防・外交分野について具体的戦略明かさず

 農村問題について詳しく報じられた一方で、国防・外交分野の具体的な方針については、ほとんど発表されなかった。

 まず、国防分野については、金正恩総書記が、「国家防衛力の質的変化」や、朝鮮人民軍における「訓練第1主義」などに言及したとあるが、詳細は伏せられている。核やミサイルといった用語も、報道上では出てきていない。

 外交分野では、「多事にわたる変化の多い国際政治情勢と周辺環境に対処して北南関係と対外活動部門で堅持すべき原則的問題と一連の戦術的方向を提示した」とだけ伝え、戦術的方向について詳細は明らかにされなかった。

 ただ、金正恩総書記は昨年9月の施政演説で、「対米戦略的構想を徹底的に実行するための戦術的対策を立てることに万全を期するための課題を示した」と報じられており、ここでの戦術的対策と同一の意味だと考えられる。

対米方針を示さなかった3つの可能性

 総会の分野別会議では、金英哲(キム・ヨンチョル)党統一戦線部長など、対米・対韓交渉にかかわる幹部たちが出席していたことから、米朝交渉や南北対話についても議論があったとみられる。

 そのため、総会後には、対米方針が示されるものと注目されていたが、米国への言及自体が皆無であった。

 発表がなかった理由として、現状では3つの可能性が考えられる。

 1つ目は、すでに米国や韓国との水面下交渉が進んでおり、これを阻害するような余計な言及を避けたという可能性である。

 2つ目は、米中対立や韓国大統領選挙など、先が読めない状況が続いていることから、あらゆる情勢の変化に対応できるように、具体的戦略の公表を控えたという可能性である。

 3つ目は、北朝鮮は昨年も一貫して、「対朝鮮敵視政策を撤回するまで米国と対話しない」と主張しており、その方針に変化もないため、米国についてわざわざ言及しなかったという可能性だ。

 つまり、「北朝鮮は自力更生を進めており、米国との交渉を重要視していない」というアピールとも考えられる。

 実際のところ、報道上では、北朝鮮と米国の双方が、「相手の出方待ち」を続けており、対話進展の動きは出ていない。

 当面は、任期終了目前の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が、2月の北京冬季オリンピックに向けてどのような対話プランを打ち出し、これに北朝鮮がどのように反応するのかが注目される。

八島 有佑
@yashiima

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