北朝鮮の北京五輪参加を認めるよう中韓動くも当の北朝鮮は?

北朝鮮の北京五輪参加を認めるよう中韓動くも当の北朝鮮は?

12か国語に対応している 出典 北京2022冬季オリンピック公式サイト

 昨年9月8日に国際オリンピック委員会(IOC)は、東京オリンピックへの不参加を理由に北朝鮮の資格停止処分を決定。

 このため、現状では、今年2月の開催される北京冬季オリンピックに参加できなくなってしまった。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとっては痛い。

 平昌冬季オリンピックでは、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)氏を招いて南北蜜月を演出し、政権支持率を上昇させた成功体験がある。北京五輪でもその再現を狙っていたようだ。

 オリンピックを利用して金総書記との直接対話を実現し、関係の改善を図ろうと画策していただけに…、チャンスを潰してなるものかと、韓国からIOCに北朝鮮のオリンピック参加を認めるよう働きかけてもいる。

 また、中国もこの件に関して水面下で動いているとうわさされる。

 IOCがそれに動かされ、北朝鮮のオリンピック参加を認める可能性はまだ残っているのだが。

 しかし、当の北朝鮮はと言えば、IOCの処分に対して抗議することもなく静観を決め込んでいる

 「本当はオリンピックに参加したくないのでは?」そんな風にも思えてくる。

新型コロナは怖いしお金もないし…

 北朝鮮が、東京オリンピックに選手団を送らなかったのは、「選手たちを新型コロナウイルスから守るため」というのが理由。

 防疫や医療体制の脆弱な北朝鮮では、外国からのウイルス流入を極度に恐れている。選手や大会関係者が、東京からウイルスを持ち帰っては困ると考えたのだろう。

 現在もパンデミックは終わっていない。新型コロナへの警戒を緩めるわけにはいかない。むしろ、変異種オミクロン株の流行などもあり警戒レベルは上がっている。

 東京オリンピックの時以上に、北朝鮮が選手団の派遣を躊躇(ちゅうちょ)してしまう状況になっている。

 また、東京オリンピックに参加しなかった理由には、「お金の問題」もある。「資金不足で選手派遣が苦しかったのでは?」と、いった話は当時よく聞かれた。

 こちらも経済制裁は、いまだ解除されず、状況はまったく変わっていない。

東京五輪不参加でIOCからの分配金ももらえず

 昨年11月、IOCは東京オリンピック成功の報奨金として各国のオリンピック委員会に総額2850万ドル(約32億5000万円)の分配金を与えると発表した。

 発展途上国では、これが選手育成や次のオリンピックに選手団を派遣するための資金にもなる。

 しかし、東京オリンピックに不参加だった北朝鮮に分配金が支払われるはずもない。そのため、苦しい懐事情は、さらに厳しくなっていると推察される。

 北朝鮮からすれば、IOCの資格停止処分は、むしろ、ありがたかったのではないだろうか。これで参加しない理由ができる。

もともと冬季オリンピックへの関心は薄い

 夏季オリンピックで不参加だったのは、1984年のロサンゼルス大会と1988年のソウル大会の2回だけ。いずれも政治的理由である。

 ところが、特に政治的問題もない状況にかかわらず、冬季の不参加は6回にもなり、最近では2014年のソチ大会にも選手団を送っていない。

 オリンピックは、国威発揚の場でもある。自国選手が活躍しなければ、金を使って選手を送り込む意味もない。

 夏季オリンピックで北朝鮮選手団は、16個の金メダルを獲得。銀や銅まで含めると55個のメダルを得ている。

 しかし、冬季オリンピックでは、いまだ金メダルはなく、獲得したメダルの総数はわずか2個。1992年のアルベールビル大会の女子ショートトラック500メートルで、ファン・オクシル選手が、銅メダルを獲って以来30年近くも表彰台に上がる選手が出ていない。

 これでは選手を送る意味もない。「新型コロナは怖いし金もないのに、無理してオリンピックに参加する理由がどこにある?」そんな感じか。

 だから、韓国政府の資格停止処分解除を求めるIOCへの働きかけも「余計なことするなよ!」くらいに思っているのかもしれない。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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